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『我ら荒野の七重奏(セプテット)』

我ら荒野の七重奏
『我ら荒野の七重奏』 (集英社)
著:加納朋子

『七人の敵がいる』の続編である。

冒頭では陽子の息子、陽介も小学校の高学年になっている。
そして、紆余曲折がありつつも中学生になり、吹奏楽部へと入部する。

主人公の陽子は働きながら子育てもこなす兼業主婦(ワーキングママ)である。
彼女の男勝りで思ったことは物怖じせず言ってしまう性格から、ついつい周りに敵をつくってしまう。
そんな彼女は息子の陽介の小学校入学によって、PTAや学童などの活動、言ってしまえばお金ももらえないボランティアに時間を割かれ、奮闘することになる。

小学校のPTAで苦労させられた陽子だが、中学でもクジでPTA役員をすることに。
だがこの本の中核はPTAではなく、吹奏楽部の保護者会である。

小学校のPTAでの苦労から「動かざること山田のごとし」で、事を荒立てずに行こうとする陽子。
しかし、相変わらずの男勝りで思ったことは物怖じせず言ってしまう性格は、やはりいろいろとやらかしてしまうのである。

そこに前作でも登場した玉野遥や五十嵐礼子、村辺千香も加わり、てんやわんやである。


中学で(力を入れている)部活をしている子を持つ親はこんなにも大変なのかと思いながら、楽しく読み進めることができた。



久しぶりに加納朋子の作品を読んで、一週間の「7」、虹の七色の「7」、「七人の敵がいる」の「7」、そして七重奏の「7」と7でつながる物語をまた1から読み返したくなってきた。
『月曜日の水玉模様』は陽子の高校時代のソフトボール部キャプテンだった片桐陶子が主人公であり(陽子は登場しない)、『レイン・レインボウ』はそのソフトボール部のメンバーたちの群像劇である(陽子の初出となる作品)。





(関連書籍)
tukinosabakuwosabasabato『レインレイン・ボウ』
著:加納朋子 (集英社文庫)

→ レビュー



tukinosabakuwosabasabato『七人の敵がいる』
著:加納朋子 (集英社文庫)

→ レビュー






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『こちら文学少女になります』

こちら文学少女になります
『こちら文学少女になります』 (文藝春秋)
著:小嶋陽太郎

「文学部で、専攻は日本文学。本を読むことを唯一にして最大の娯楽として生きてきた」文学少女の山田友梨。
就職先の出版社、遊泳社で文芸部を希望していたが、配属先は青年漫画誌・ヤングビートの編集部だった。

クセ者ぞろいの編集部で、はじめて担当することになった大物作家をいきなり激怒させる。
さらに雑誌で1,2を争う人気の「いまだ、できず」や「キヨのひらく箱」の担当も任されて、兎にも角にも戸惑いばかりの日々。

そんな中、家にはなぜか「キヨのひらく箱」のキヨまで現れ……。



主人公が漫画編集者として四苦八苦しながら、過ぎていく日々は展開が早く、さくさくと読み進めることができる。
内容もおもしろく、文に勢いがあると感じた。

謎も用意されているが、こちらは勘のいい人ならすぐにわかってしまうだろう。

ある意味ではシンプルな、ひとりの新人社員の成長を描く物語。




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『こちら文学少女になります』

カード・ウォッチャー
『カード・ウォッチャー』 (角川春樹事務所)
著:石持浅海

塚原ゴムの基礎研究室で働く下村勇介。
彼がサービス残業中に怪我をしたことを発端に労働基準監督官の臨検が入ることとなる。

臨検ときき大慌ての研究総務の米田と小野。
臨検のための準備をしている最中、小野は倒れている基礎研究所員の八尾を発見。
すぐさま米田に知らせるが八尾はすでに息を引き取っていた。

もうすぐ労働基準監督官がやってくるというタイミングで遺体を発見した研究総務の二人がとった行動は。


読み終わって、なんだかやるせない話だなと思った。
もちろん謎は解決されすっきりするのだが。

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『五日市剛さんの ツキを呼ぶ魔法の言葉 講演筆録』

ツキを呼ぶ魔法の言葉
『五日市剛さんの ツキを呼ぶ魔法の言葉 講演筆録』
原話:五日市剛

絵本を読んで気になったので、元となった講演筆録も読みたくなった。

絵本の内容は絵本であるがゆえに脚色も多いのではと思っていたが、思った以上に事実ばかりで驚いた。
特に箱の話は半分くらいが脚色だろうと思っていた。

そして絵本だけでは語られなかった、不良少女の家庭教師をした話(これは2作目の絵本になっているようである)や松下幸之助の話から部下の話まで、いずれも興味深かった。

実例を挙げて語られると真実味が増し、「ありがとう」、「感謝します」、「ツイてる」の3つの言葉をどんどんと使いたいと思ってくる。

言霊というのはたしかにあると思うので、3つの言葉を使うだけで少しでも前向きになれて、またそれらの言葉を積極的に使おうという動機になってくれる内容。



※アマゾンでは売っていなかったため、今回は楽天の画像を使わせていただき楽天にリンクをはっています。


(関連書籍)
ツキを呼ぶ魔法の言葉
『ツキを呼ぶ魔法の言葉  魔法使いのプレゼント』 - 絵本 -
原話:五日市剛 文:ほしのひかり 絵:古山拓 (マキノ出版)

→ レビュー


ツキを呼ぶ魔法の言葉
『ツキを呼ぶ魔法の言葉  不良少女の家庭教師』 - 絵本 -
原話:五日市剛 文:ほしのひかり 絵:古山拓 (マキノ出版)

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『矢上教授の午後』

矢上教授の午後
『矢上教授の午後』 (詳伝社)
著:森谷明子

舞台は東京都下、多摩地方にある大学の生物総合学部、広大なキャンパスの一角にある第一研究棟という老朽化した建物。
通称「オンボロ棟」である。

矢上教授はそのオンボロ棟の一部屋に研究室をもつ非常勤講師だ。
しかし白髪、白髯、七十年配のまさに教授と言わせし風貌なのである。

そんなオンボロ棟では奇妙な出来事が起きていた。
パリンバンと言う民族楽器の汚損、表彰状盗難。

そんな最中、事件は起こる。
オンボロ棟で身元不明の死体が発見されるのである。
さらには落雷によって停電したオンボロ棟はエレベーターが使えず、非常階段も1階部分が開かなくなっておりオンボロ棟はまさに閉鎖空間となってしまう。

閉鎖空間に死体。
まさにミステリの王道の一つである。

主要な登場人物はオンボロ棟に閉じ込められる限られた人物たちと他数人なのだが、パートが変わるたびにその登場人物たちの間で語り部が変わる。
こういった転換に慣れていなければ、とても読みにくいだろうと思う。
個人的には、さほど読みにくさも感じず、サクサクとパートが変わっていくので、むしろ読みやすかった。

ただ謎の方はやや重厚感に欠け、物足りなさは覚えた。
とはいえ、つまらなかったわけではなく、むしろ面白かったので著者の他の作品も読んでいきたいと思う。

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