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『さよなら妖精』

さよなら妖精
『さよなら妖精』 (東京創元社)
著:米澤穂信


学校の帰り道、雨宿りをする外国人の少女と出会う。
ユーゴスラビアから来たという彼女とすごした日々を日記を追うという形で回想する。

彼女や友人らと過ごす中で出てくる日常の謎がちりばめられている。
そして物語全体を通して投げかけられる大きな謎を描いたミステリ小説。
また彼ら、彼女らの成長を描いた青春小説でもある。
古典部シリーズに通じる青臭さがありつつも、ちょっとドライなストーリー。

新装版ということで書き下ろし短編の「花冠の日」も収録されている。
マーヤの話であり、これが加わることでより物語の切なさが増す。





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『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』

ゴースト≠ノイズ(リダクション)
『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』 (創元推理文庫)
著:十市社


高校である失敗をしてしまい、クラスメイトから幽霊として扱われる一居士架(いちこじ かける)
家の火事で架は死んでしまったのだという。
そして時折襲ってくるノイズで周りの音も聞こえなくなる。

あるとき突然、クラスメイトの一人玖波高町(くば たかまち)に話しかけられる。
これまで誰にも見向きもされなかった架に、大きな変化が起こり始める。

最後まで、結末がどう転ぶのかハラハラしながら読んだ。
読んでいて、たしか円居挽のルヴォワールシリーズだったと思うのだが、そこで書かれていた「真相は作者の匙加減次第」という言葉を思い出した。

ロジックの見事さや、あざやかな手品のような謎と謎解きはミステリの醍醐味だが、このハラハラ感もまたミステリの醍醐味なのだと久しぶりに感じさせてくれた本である。





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『百鼠』

百鼠
『百鼠』 (ちくま文庫)
著:吉田篤弘





一角獣

百鼠

到来


(目次より)


「この目次で書いてみたい」という思いから出来上がった本。

表題作の「百鼠」は、天上でくらす朗読鼠のイリヤが一人称に興味を持ってしまう話。
百鼠は地上の三人称を司っており、朗読鼠は地上で作家が三人称の小説を書くときに降りてくる声を担当している。
そして「三人称法典」というものがあり、一人称や二人称を使うことができない。

なんとも愉快な設定である。

3つの話に共通しているのは、主人公がちいさな冒険ででること、人称についての話、そして雷である。
まったく違う話の様で、根底にあるテーマは同じなのだと気づかされる。

いずれも静かな文章で、美しい世界がつくりあげられている。




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『満願』

満願
『満願』 (新潮社)
著:米澤穂信


6つの短編がおさめられている。
いずれもいい意味で薄気味悪く、耽美な物語という印象をもった。

個人的に謎が謎のままというもやっとした終わり方は好まないので、著者があまりそういった終わり方をしないことを信頼しつつ読んだ。
期待通り、伏線はしっかり回収し、謎はスッキリと解決。

だが謎が解決されつつもハッピーエンドとは限らないのもこの著者の持ち味。
そこに展開がどう転ぶかわからない楽しさがある。
この本に納められている6篇も、絶妙な塩梅だった。

個人的には表題作の「満願」が最も好みだった。

刑期を終えて出所した鵜川妙子。彼女の家に学生時代に下宿していたのは、弁護士の藤井である。

妙子は殺人を犯したことによって刑務所に入っていたのだが、その事件で妙子の弁護をしたのも藤井である。
世話になった妙子のために、少しでも罪を軽くしようとする藤井であるが、あるとき突然妙子は「もういいんです」と言い、控訴を取り下げる。

裁判であらそうことに積極的だった妙子が、なぜ突然控訴を取り下げると言い出したのか。






以下ネタバレ。


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『チョコリエッタ』

チョコリエッタ
『チョコリエッタ』 (角川文庫)
著:大島真寿美


私はチョコリエッタ。
うそ。
宮永知世子なんていうダサイ名前。
春休み、髪を切った。人が啞然とするくらい短く切った。どこからどう見ても少年になった。女の子なんてまっぴらだから。
うそ。
少年だってまっぴら。
ついでに言えば人間なんてまっぴら。  (冒頭より)


知世子が幼稚園の夏休みに、家族で出かけたとき交通事故で母を亡くした。
知世子は、父と、母親代わりをしてくれている父の妹の霧湖ちゃんと、そして事故の数か月前に飼いだした犬のジュリエッタと暮らしていた。

でも、その愛犬ジュリエッタも知世子が高校一年生の2月に死んだ。

この4月からは高校二年生となる知世子。
新年度早々、進路調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらった。


愛犬のジュリエッタの名前の由来は、犬がやってきた日、母が目がくりくりしていて、ジュリエッタに似ているということでつけた。
ジュリエッタはフェリーニのジュリエッタだという。

イタリアの映画監督、フェデリコ・フェリーニ。
そのフェリーニのパートナー、女優であり妻でもあるジュリエッタ・マシーナ。

本作ではフェリーニのとくに「道」に関連した内容が随所に登場する。


映画研究会に所属する知世子は、OBの正岡正宗に半ば強引にカメラを向けられる。


読んでみて感じたのは、静かな曲をピアノの独奏で聴いているかの様な、美しさと寂しさ。
熱のこもった青春小説ではなく、若いが故の危うさ、不安定さ、繊細さを透明感ある文章で見事に書きだしている。





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