『ぼくらのサイテーの夏』
『ぼくらのサイテーの夏』 - 児童書 -
著:笹生陽子 (講談社文庫)
粘りつくような暑さが続く夏、小学6年の1学期の終業式の日、学校で「階段落ち」をして遊んでいた。
主人公であるぼく(=桃井)は四組で、相手は二組の奴らだった。二組の栗田に九段落ちをかっこよくキメられて勝負に負けた。さらに桃井はケガまでしてしまった。それだけならまだしも、罰として夏休み中プールの掃除をする羽目になってしまう。しかも成り行きから栗田と二人で。
友達との関係やそれぞれの家庭の問題などを織り込みながら、「ぼく」の成長が丁寧に描かれている。
デビュー作ということでしかたがないのかもしれないが、桃井家が好転していく様子や栗田家で起こることなどは多少ディテールの甘さを感じてしまった。しかし、そんなことが気にならないくらい勢いのある展開で、また児童文学はこうでなくてはと思わされるほどのさわやかな読後感をもっている。
作中にでてくる桃井の父と栗田の父の時間に関する考え方も物語のエッセンスとしてうまく効いている。
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コミュニティ( 本・雑誌
| 児童書 )
『紫の砂漠』
『紫の砂漠』 (ハルキ文庫)
著:松村栄子
見守る神(ナチュレ)、告ぐる神(サイコ)、聞く神(メモリ)、それぞれに使える祈禱師、巫祝、書記。
人間は生まれたときには性別がなく、真実の恋をして生涯の伴侶を定めたとき初めて生む性と守る性に分化、つまり男女の性差が決定する。
地理的には中央に紫の砂漠(デゼール・ヴィオレ)があり、その周りに村がある。基本的には紫の砂漠は神の領域として禁域であり立ち入ることは許されない。
子どもは7歳になると運命の旅をして一斉に聞く神の元に集められ、告げる神によって運命の親の元に授けられる。
こういった設定にはじめは戸惑うかもしれないが、読み進めていくとしっかりと理解できるように書かれている。
主人公のシェプシは塩の村に生まれ育ち、紫の砂漠に強く心惹かれている。
また普通の人とは違い、丸い耳を持っている。
シェプシは落日近い紫の砂漠で隊商からはぐれて一人彷徨う吟遊詩人を見つける。
そしてシェプシはその詩人と関係を深めつつ、運命の旅へと出発するのであった。
読んでいて、異国の風に吹かれているような奇妙な感覚に襲われた。
まったく知らない世界、自分の住んでいるところは全く異なる文化、それなのにどこか懐かしい、そんな風に感じたのだ。
運命の旅の途中、シェプシは多くのこと知りを経験する。
その内容はここでは書かないが、その内容に多くのことを考え、またそれがもたらす結末になんだかやりきれない思いをしてしまた。そして読み終えたときにはとても静かな心持ちを得た。
SFやファンタジー、あるいはロマンティックな物語が好きならば一度手にとってみてはと思う一冊であった。
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(関連書籍)
『詩人の夢』著:松村栄子 (ハルキ文庫)
紫の砂漠の続編
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コミュニティ( 本・雑誌
| SF小説 )
『オーデュボンの祈り』
『オーデュボンの祈り』 (新潮文庫)
著:伊坂幸太郎
伊藤は目を覚ますと見知らぬ部屋で一人寝ていた。
ノックされるドア。
ドアを開けると見知らぬ男が立っていた。
その男は日比野といい、轟という人物に頼まれ島を案内しに来たのだという。
主人公である伊藤がいたのは仙台の牡鹿半島をずっと南にある荻島という島だった。その島は外との交流はなく外界とは隔絶されているという。
また出会うのは、嘘しか言わない園山という元画家や地面に耳をつけて遊んでいる若葉という少女、島のルールで人殺しの桜という男、未来のことを知っており喋ることのできる優午というカカシなどとても変な住人ばかり。
さらに島には
「此処には大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ」
「島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく」
という古い言い伝えがある。
多くの人は信じていないが、日比野は信じている。
そんな住人と会ったり、変な言い伝えを聞かされたりという一日がとりあえず過ぎ、次の日目を覚ますと島の状況が一転していた。
島の指針であった優午が殺されるのだ。
わからないことだらけである。
なぜ未来を知っているはずの優午は自分の死を阻止できなかったのか?
犯人はいったい何なのか?
言い伝えは本当なのか?
本当ならば島にないものとはいったい何なのか?
率直な感想であるが、とてもおもしろかった。
設定がおもしろく、また場面転換が多いので飽きずにサクサクと読み進めることができた。
この本に関しては「内容がわかりにくい」だとか「村上春樹を彷彿させる」といったレビューを読んでいたので覚悟して読んだのだが、個人的にはまったくそんなことは感じなかった。
むしろ、世界観がはっきりとしていて、そのなかで出てくる謎をその世界観にそって謎解きするという本格的な推理小説であった。
この小説をファンタジーと位置づけている人が多いようだが、どちらかというとSFの要素が強いように感じた。SFの世界設定として、喋るカカシや荻島などの解説が甘いとは思うが、現実世界には存在しない法則を仮定した上に成り立っていると思う。
まあ、ファンタジーでもSFでもよいのだが、非現実的な設定が読者の幅を狭めているのは事実のようである。また場面転換の多さも、人によっては読みにくいかもしれない。
しかし、こんな変わった設定のミステリ小説は稀有であり、また多少の詰めの甘さは感じるものの、とても完成度の高い作品であると思うので、ぜひ一読してみてほしい。
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コミュニティ( 本・雑誌
| 推理小説・ミステリー )
『せせらぎの迷宮』
『せせらぎの迷宮』 (ハルキ文庫)
著:青井夏海
大学図書館に勤める斎藤史は、小学校の同級生の大村生夫に呼び出され、二十年ぶりに再会することになった。担任だった杉本先生が定年を迎えるにあたり、かつてクラスで作成した文集を揃えて贈ろうというのだ。だが、肝心の文集が見当たらない。途方にくれ、かつてのクラスメイトたちに連絡を取り始めるのだが、文集の存在は彼女たちの記憶からも消えていた-。当時の思い出と記憶をたどり、史は消えてしまった文集の謎を追うが…。 (裏表紙より)
内容はまさに裏表紙に書いてあるとおりである。
構成は主人公の史が文集を探す現在と、小学生時代の回想が交互に書かれている。
グループをつくること、秘密をつくること、いい子を演じることと本音、些細なことに一喜一憂すること、小学校の高学年の女の子ってたしかにこんな感じかもしれない。
謎自体はそれほど難しいものではないが、昔何があったのか気になるような書き方がしてあり、どんどんと先を読みたくなる。またその謎が解けたあとも史がどのような行動にでるのか、結末はどうなるのかというところまで楽しめた。
読後感は、少し苦いものが残りながらもあったかい気持ちになれるものであった。
自分の小学生時代を思い出しながら読んでみてはどうだろうか。
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コミュニティ( 本・雑誌
| 推理小説・ミステリー )
『ぬしさまへ』
『ぬしさまへ』 (新潮文庫)
著:畠中恵
『しゃばけ』に続く、シリーズ2作目。
前作は長編だったが、今作は6つの話からなる連作短編である。
主人公はもちろん、体調を崩しては寝込んでばかりいる若旦那の一太郎であり、今作でも十二分に活躍する。
しかし、他にも、「空のビードロ」では、前作で若旦那が奮闘しているときに松之助に何が起こっていたのか、何をしていたのかということが描かれていたり、「仁吉の思い人」ではタイトルのとおり手代の仁吉とその思い人との話が書かれていたりと、バラエティーに富んだ一冊となっている。
「虹を見し事」という6つ目の短編では、一太郎が幼馴染みの栄吉のいる隣の菓子屋三春屋にこっそりと出かけて帰ってくると、いつもは其処彼処にいるはずの妖怪たちの姿がない。それから一太郎には、夢なのか現実なのかわからない不思議なことがおこる。
6つの短編の中で印象的だったのは上にあげた2つであったが、この「虹を見し事」がストーリーとしては一番好きである。この話は、読み終えたときとても切ない気持ちになってしまった。それとともに一太郎がこれからどんどんと成長していき、恋をするような話が描かれるのではないだろうかという期待もさせてくれた。
思わず続編にも期待が膨らんでしまう。
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(関連書籍)
『しゃばけ』著:畠中恵 (新潮文庫)
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レビュー
『ねこのばば』著:畠中恵 (新潮文庫)
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コミュニティ( 本・雑誌
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『はなのおはなし』
『はなのおはなし』 (ベストセラーズ)
著:はな
毎日中学生新聞に連載されていた「はなははな」に加筆して出版された、はなの初エッセイ。
現在、たくさんのエッセイなどを出しているが、その原点である。
今と変わらず、とても読みやすい文章で、写真やかわいらしい絵もたくさん、そんなところでもはなははなだと感じさせてくれる。
出版されたのが1999年なのでちょっと古い内容もあるけど、とても楽しめる♪
映画の話、弟のこと、髪型の話、旅の話などなど、日常のいろいろなことをはなの目線でかいていて、自分もはなを見習って自分らしく生活したいななんて気持ちにしてくれる。
ちなみに今手元にあるこの本にははなの直筆サインが入っている♪
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