もみじの本屋   岡嶋二人

『殺人!ザ・東京ドーム』

殺人!ザ・東京ドーム『殺人!ザ・東京ドーム』 (講談社文庫)
著:岡嶋二人

「密かに日本に持ち込まれた南米産の猛毒クラーレ。巨人対阪神戦に沸く東京ドームで、この毒を塗った矢による殺人事件が発生した。大観衆五万六〇〇〇人の面前にもかかわらず、犯行現場の目撃者は皆無。……」(裏表紙より)


あらすじはまさに上記の通りである。
この作品は推理ものではなくサスペンスなので、最初から毒を持ち込んだ人物や殺人犯が誰なのかがわかっている。
またなぜ犯人が犯行に及んだのかについても読者は犯行が行われる前から知っているのだ。

この本のおもしろいところは、ひとつは久松敏彦という登場人物の描写である。周囲からずっと馬鹿にされ続けてきて自分に自信をもてなかった彼、虫を針でとめて写真を撮るという趣味もち、珠美という家の近くのクリーニング店の店員に恋している。そんな彼がある日突然大きな力を手に入れるとどうなるのか。

犯人や警察など登場人物の思考もまたおもしろい。犯人の真意と警察や犯人を脅迫する人物が考えていることとのずれを読者は楽しむことができるのである。

テンポもよいので、飽きることなく最後まで楽しむことができる。
この作品は『99%の誘拐』と同じく1988年の作品であるが、岡嶋二人の作品にはやはり時代の先見性というものを感じさせられ驚かされる。


amazonで見るbk1で見る7&Yで見る楽天booksで見る




  岡嶋二人 トラックバック:0 コメント:0
コミュニティ( 本・雑誌 | ブックレビュー

『99%の誘拐』

99%の誘拐『99%の誘拐』 (講談社文庫)
著:岡嶋二人

昭和43年、一人の子どもが誘拐された。
子どもの名は生駒慎吾、「イコマ電子工業」という小さな会社の社長生駒洋一郎の息子である。身代金として五千万円分の金を要求され受け渡しをする。
しかしこの事件は、その後の「三億円強奪事件」によって人びとの記憶からは消えてしまう。

昭和51年、生駒洋一郎は慎吾への手記を残し病死する。

昭和63年、生駒慎吾はイコマ電子工業を吸収合併したリカード・カメラの研究員として働いていた。
そしてその年、リカードの社長武藤為明の孫、葛原兼介が誘拐された。

これは1988年の作品であり、登場するパソコンや簡単なインターネット用語、さまざまなOA機器にはどうしても古めかしさを感じる。
しかし、それはこの本を読む上でたいした問題ではない。ストーリーは今読んでも新鮮味さえ感じてしまう。
そして、その見事な誘拐劇にぐいぐいと引き込まれてしまう。
逆に、機械関係の古めかしさは、いま読むと多くの人が理解できる内容で、今だからこそ読みやすい作品となっている。

第十回吉川英治文学新人賞受賞、2005年版『この文庫がすごい!』「ミステリー&エンターテインメント」編第1位の作品、是非、岡嶋二人の傑作誘拐推理小説をどうぞ。


amazonで見るbk1で見る7&Yで見る楽天booksで見る




  岡嶋二人 トラックバック:0 コメント:0
コミュニティ( 本・雑誌 | 推理小説・ミステリー

『どんなに上手に隠れても』

どんなに上手に隠れても『どんなに上手に隠れても』 (講談社文庫)
著:岡嶋二人

売り出し中の歌手、結城ちひろが歌番組のリハーサルのあと誘拐されてしまった。
白昼堂々、テレビ局から誘拐されたにもかかわらず、犯人の手がかりになるようなものは出てこなかった。
事件がおこる直前、警察に「結城ちひろを誘拐しようとしている男たちがいます」という電話がかかっていた。

大胆かつ緻密な犯行、犯人に翻弄される警察、芸能プロダクションやCMのスポンサーなども巻き込み、誘拐事件は予想外な方向へと発展していく。

岡嶋二人の真骨頂と言われる誘拐ものだが、誘拐の先を描いているため、この本は有名な「99%の誘拐」などとはまた違った印象をうける。

ちなみにこの本の解説は東野圭吾が書いており、ひたすらこの作品や岡嶋二人のことを賞賛している。


amazonで見るbk1で見る7&Yで見る楽天booksで見る




  岡嶋二人 トラックバック:1 コメント:0
コミュニティ( 本・雑誌 | 推理小説・ミステリー

『クラインの壺』

クラインの壺『クラインの壺』 (新潮社)
著:岡嶋二人

メビウスの輪を知っているだろうか。短冊状の紙を半回転ひねってテープやノリでひっつけてできるあれである。メビウスの輪は輪の外側の面をたどっていくといつの間にか内側の面になり、そのままたどっていくとまたいつの間にか外側の面になっている。
つまり、裏と表がつながっている、もしくは裏も表もないのである。一枚の平面上の紙からそのようなものができるのはとても不思議なことで、この法則をクラインの法則という。そうこの本のタイトルの“クライン”である。
ストーリー自体はよくあるパターンなのだが、見たり読んだりしたことがある同じような話の中ではもっとも良くできた話だと思う。著者(達)の巧みな文章のせいだろうが、読んでいるこちらまでクラインの法則の術中にはまってく。




  岡嶋二人 トラックバック:1 コメント:4