もみじの本屋   立原えりか

『おばけものがたり』

おばけものがたり『おばけものがたり』立原えりかのファンタジーランド2 (青土社)
著:立原えりか

大きな湖の底に住んでいるタムタムおばけ。足の長さが3メートルもあり、あたまにはつの一本がある。だけど、気は弱いほうだった。

おばけたちはとても心やさしく、人間と仲良くしたいと思っている。
だけど、人間が勝手に怖がったり、悪さをするものと思っていたり、また見世物にしようとして捕まえたりするのだ。
それに危険を感じたおばけたちは、ある日、おばけのくにを解散して、みんなばらばらになって人間の目につかないところで暮らすことにした。そんなわけでタムタムおばけは湖の底に住んでいた。

解散式の時に、おばけたちは再会を誓いあって悲しい別れをした。タムタムおばけも、いつか一緒に暮らそうと約束をしてとっても仲のよかったジムジムおばけとも別れたままなのだ。

ある日、湖のお化けを捕まえたら100万円をくれるという立て札が立った。そして人間たちがシュークリームを餌にしてお化けを釣ろうとしはじめる。
そんなことで本当にタムタムおばけが釣れるわけはないのだけど、タムタムおばけは湖の底に沈んできたおいしいシュークリームを集めて、ジムジムおばけのところに会いに行く。
そして二人だけで暮らすために海にでる。

ほかにもタムタムおばけとジムジムおばけの友達のコチコチおばけとカチカチおばけやロムロムおばけとリムリムおばけなど、いろいろな心やさしいおばけが登場する。

人間は騙したり、乱暴したりする存在として描かれているがそのとおりなのだろう。
ときどき、ロムロムおばけやリムリムおばけが出会ったような心やさしい人間もいるのだろうけど。
このあたりの描かれ方は著者の皮肉がたっぷりで、いっそ愉快である。
とくに結末は、思わず苦笑いしてしまった。

講談社青い鳥文庫でも出版されたが(絶版)、こちらはやなせたかしの挿絵があるそうだ。


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『どこにもない動物園』

どこにもない動物園『どこにもない動物園』 立原えりかのファンタジーランド1
(青土社)
著:立原えりか

さまざまな動物が登場する16の話が収められている短編集。
全体に、哀愁というのだろうか、少し物悲しい雰囲気が漂っている。

とくに気になった作品は「花くいライオン」、「青い目をしたろば」、「オオカミの船」、「野原の食卓」、「光をたべる仔馬」、「木馬が乗った白い船」の6話。
いくつかを簡単に紹介しよう。

「花くいライオン」
ひげがなくなり、けもののくにの王さまかんむりをヒョウにあげて、ひとりけもののくにから離れていくライオン。それまで慕ってくれていたキリンもヒョウも見向きもしてくれない。
草原で涙をこぼして、「だれか、ともだちになってくださいよお。こころからの、ともだちなって、ヒゲがなくっても、ともだちでいてくださいよお」というと、ちいさな白い花が声をかけてくれたのだ。
ライオンとちいさな花はとっても仲良くなり、一緒にすごしていくのだけれど…。

「オオカミの船」のオオカミも、一人ぽっちで寂しくて友達をほしいと思っていて、ある一人の女の子と仲良くなる。一人の寂しさを思い、読んでいてこちらまでなんだかさみしくなってきた。だけど、とっても仲のいい友達ができて、そして結末は・・。どちらの結末も胸を締め付けられるような気がした。だけど、後味は悪くない。むしろ、冬の星空を見るようなそんな透きとおった清々しさを感じた。

「青い目をしたろば」
湖のほとりの小さな村、大きなアンズの木があるところで、子供をのせてアンズの花の下をひとめぐりするのがロバたちのしごとだった。そのなかに年をとった青い目をした一頭のロバがいた。そのロバは、好きになれる、愛してみることができる何かに会えないかと思っているのだった。
アンズの花が一番美しいある晴れた日、「わたしを、のせてくれる?」と、とてもちいさな女の子が青い目をしたロバにほっと笑いかける。そしてロバはその女の子を乗せて歩きはじめる。

ロバが好きになることの説明をこんなふうに言っていた。
「そのひとのために、せいいっぱい、何かしてあげるんだ。そのひとのことだけを、いっしょうけんめいにかんがえて、夢中になって……」
女の子のために、ロバは本当に一生懸命になるが…。
最後の「それは、たしかに、夏のにおいでした。」という一文が、悲しさや切なさよりも明るい何かを感じさせるところにひかれてしまう。

「木馬がのった白い船」
ある郵便局の局長さんが宿直にあたっていた時、一頭の木馬が手紙を出しにやってきた。木馬はとても遠い所に行くことになったので、おけしょうをしてほしい、見送りにきてほしいという内容の手紙だった。
木馬が返事をとりに来る日、局長さんはまた木馬に会えるのを嬉しく思いながら木馬を待ち、やってきた木馬に返事を読んでやる。
そして、局長さんも木馬の見送りにいくことにする。

この一話だけは、ほかの話とは少し違った印象をうけた。
ほかの話と同じように物悲しい雰囲気はあるものの、木馬の愛嬌のためだろうか、愉快な印象のほうが強かった。だから、ほかの話よりもシンプルに物語を楽しむことができた。


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