もみじの本屋 ●マ行の作家

『矢上教授の午後』

矢上教授の午後
『矢上教授の午後』 (詳伝社)
著:森谷明子

舞台は東京都下、多摩地方にある大学の生物総合学部、広大なキャンパスの一角にある第一研究棟という老朽化した建物。
通称「オンボロ棟」である。

矢上教授はそのオンボロ棟の一部屋に研究室をもつ非常勤講師だ。
しかし白髪、白髯、七十年配のまさに教授と言わせし風貌なのである。

そんなオンボロ棟では奇妙な出来事が起きていた。
パリンバンと言う民族楽器の汚損、表彰状盗難。

そんな最中、事件は起こる。
オンボロ棟で身元不明の死体が発見されるのである。
さらには落雷によって停電したオンボロ棟はエレベーターが使えず、非常階段も1階部分が開かなくなっておりオンボロ棟はまさに閉鎖空間となってしまう。

閉鎖空間に死体。
まさにミステリの王道の一つである。

主要な登場人物はオンボロ棟に閉じ込められる限られた人物たちと他数人なのだが、パートが変わるたびにその登場人物たちの間で語り部が変わる。
こういった転換に慣れていなければ、とても読みにくいだろうと思う。
個人的には、さほど読みにくさも感じず、サクサクとパートが変わっていくので、むしろ読みやすかった。

ただ謎の方はやや重厚感に欠け、物足りなさは覚えた。
とはいえ、つまらなかったわけではなく、むしろ面白かったので著者の他の作品も読んでいきたいと思う。




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コミュニティ( 本・雑誌 | 推理小説・ミステリー

『夢の樹が接げたなら』

夢の樹が接げたなら『夢の樹が接げたなら』 (早川文庫)
著:森岡浩之

「HappyTalk & Cooking」のピンチさんの記事を読んで読みたくなった本。
表題作で第17回ハヤカワ・SFコンテストに入選したの「夢の樹が接げたなら」をはじめ、S-Fマガジンに掲載された8編のSF作品が収められている。
どの作品もSFならではの世界観が緻密に組み上げられていて、読む者をその世界へと引き込んでいく。

「夢の樹が接げたなら」は社内言語や個人言語などの人工言語が飛び交う世界が舞台。主人公の矢萩織男は言語デザイナーとして働いているのだが婚約者の弟の異常をきっかけに、危険な未知の言語を追っていくことになる。
その言語は言語としての構造自体が全く異なるものであった。
危険を感じながらも織男はその言語に近づいていくのだが……。

他にも食べるために理想の女性をつくりあげた男とその女性を救おうと試みるキャスターを描く「スパイス」、すべてがクレジットで済まされ現金の存在しない世界で突然男のカードの残高が∞になる「無限のコイン」、近未来とも異世界ともまた過去ともとれるような設定で展開される「代官」、ある環境の中でさまざまなモノを名付けながら生活する男の子たちの話の「ズーク」など、本当に多彩な8編である。

いずれも1990年代に書かれたもので、SF作品を多く読んでいる人には多少新鮮味に欠けるかもしれないが、科学技術のもたらす問題、新しい世界、そして人の進化などが巧みに描かれた傑作である。

(TBさせてもらった記事)
→ 夢の樹が接げたなら (HappyTalk & Cooking)


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コミュニティ( 本・雑誌 | SF小説

『猿ぐつわがはずれた日』

猿ぐつわがはずれた日『猿ぐつわがはずれた日』 (幻冬舎文庫)
著:もたいまさこ

女優、もたいまさこの初エッセイ集。
独特な雰囲気のある彼女、目線もやはり独特であり、読んでいると徐々に引き込まれていく。

内容は、タコ社長や聡美ちゃんを筆頭に彼女を取り巻く愉快な人たちとの出来事や話の内容がメインである。
そして、40代を迎えての自身の変化に驚きつつも楽しんでいる様子も描かれている。
そんな様子は、群ようこといろいろなことにチャレンジするという本『活!』のなかでもうかがえる。

デパートで働いていたことがある彼女のデパートに買い物に行った時の話、香港や沖縄や白馬などに行ったときの旅先での話。

もう少し、その時に思ったことや考えたことなどを書いてほしかったような気はする。
しかし、読んでいると、書くのに苦労したんだなということがうかがえて、そんな真面目な文章にはすごく好感がもてた。


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(関連書籍)
『ほげらばり メキシコ旅行記』 著:小林聡美 (幻冬舎文庫)
『猿ぐつわがはずれた日』の中で話としてでてくるタコ社長と聡美ちゃんメキシコ旅行の日々を綴ったエッセイ。




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コミュニティ( 本・雑誌 | エッセイ

『優しい歌』

優しい歌『優しい歌』 (岩崎書店)
著:Mr.Children - 詩集 -

Mr.Childrenの曲を好きな人も多いと思うが、その彼らの曲の歌詞集である。この本の初版が2001年12月10日なので、そのころまでの曲だが選曲がとてもいい。
いつもは横書きで見ている文字が縦になるだけで雰囲気もがらりと変わる。また中の写真もきれいで、とてもオシャレな詩集に仕上がっている。
Mr.Childrenの好きな人はきっとこの一冊に魅入られるだろう。 【Read More】




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コミュニティ( 本・雑誌 | 詩集

『星の降る森で』

星の降る森で『星の降る森で』 (東京書籍)
著:本山賢司

雄大な自然は人の心を虜にする。
またときに命を奪う。
それでも人は美しい風景に憧れ、そして求める。
そんな生々しくも美しい自然の姿を描いているのがこの本だ。

9つの話が入った短編小説なのだが、「星屑のような命」が(本編とアイヌの話は関係ないのだが)アイヌの熊狩りの儀式「イヨマンテ」を思い起こさせ、個人的にはとても印象的だった。

挿絵のリアルな動植物も生き生きとしていてとてもきれいだ。
読んでいると森の中に一人でいるような穏やかで静かな雰囲気を味わえるだろう。





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