もみじの本屋 ●ナ行の作家

『死亡フラグが立ちました! 凶器は…バナナの皮!? 殺人事件』 

死亡フラグが立ちました! 凶器は…バナナの皮!? 殺人事件『死亡フラグが立ちました! 凶器は…バナナの皮!? 殺人事件』 (宝島文庫)
著:七尾与史

主人公の陣内トオルは都市伝説をテーマにオカルト雑誌「アーバン・レジェンド」に記事を書くフリーライターであり、収入のほとんどを「アーバン・レジェンド」に頼っている。ある日、編集長である岩波から「アーバン・レジェンド」のスタッフ総入れ替えの話を聞く。そうなると陣内は生活していくことができない。しかし、次号の売り上げを倍増させれば現スタッフのままでいくという。

陣内の前号記事は「死神特集」である。死神といっても大鎌をもった骸骨ではなく、ある殺し屋の通称である。死神に狙われるとジョーカーのカードが届き24時間以内に偶然の事故によって殺される。その「死神特集」への読者の反応がいいらしく、売り上げ倍増の切り札として岩波から1週間以内に死神とコンタクトをとって記事をかけと命ぜられる。

生活がかかっている陣内はいやいやながら死神探しを始める。
頼りは腹話術人形のような容姿の天才投資家で喧嘩もめっぽう強い高校時代の先輩の本宮さん。そして親分の死を死神のせいだと疑っているヤクザの松重さん。

ラノベ然としたB級感漂うタイトルに設定。だからこそエンターテイメント性が高く、ぐいぐいと読まされる。
読者にはコミカルな印象を与えつつ、登場人物たちは死神の冗談のような殺人方法に大真面目。そのギャップが愉快である。

推理小説としては、伏線がひとつにつながっていくところは気持ちいいのだが、大きなひねりがなく展開が予想できてしまうため本格派とまでは言えないかなという印象。だが、それを差し引いてもおもしろいため読んで損はなかったと思う一冊。



(関連書籍)
死亡フラグが立ちました! ~カレーde人類滅亡!? 殺人事件『死亡フラグが立ちました! カレーde人類滅亡!? 殺人事件』
著:七尾与史 (宝島社文庫)



死亡フラグが立つ前に『死亡フラグが立つ前に』
著:七尾与史 (宝島社文庫)






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コミュニティ( 本・雑誌 | 推理小説・ミステリー

『小春日和』

小春日和『小春日和』 (集英社文庫)
著:野中柊

小春日和とは晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな晴れた天候のことである。
それなのに、3月生まれで小春と日和と名づけられた双子の姉妹の物語。

母の勧めでタップダンスを習い始め、夢中になっていく。
また、それがきっかけでケチャップのCMにでたことで慌ただしくなっていく二人の周囲。

全体の雰囲気はのんびりとしていてあたたかで、まさに小春日和といった感じである。
また1967年生まれの二人が小学生のころの話が描かれているので、懐かしき昭和が感じられ郷愁を誘われる。

ただ、最近推理小説ばかり読んでいたせいだろうか、ラストがぼやけた感じでちょっと物足りなさを感じてしまった。
しかし、それもまたこの本の味のようにも思う。
読み終えたあとのふわりとした感覚がなんともいえない一冊である。



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コミュニティ( 本・雑誌 | ブックレビュー

『中原中也詩集』

中原中也詩集『中原中也詩集』 (新潮文庫)
著:中原中也 編:吉田生

中原中也は生前『山羊の歌』と『在りし日の歌』の2冊の詩集をだしている。死後も様々な形で中原中也の詩集は出されているが、基本的に生前に出している2冊をメインに、他にノートなどに書き残されていた未発表作品を収録することが多いようだ。この新潮社から出された詩集もそんな中の一冊である。
中原中也の詩を全部知っているわけではないので、確かなことはわからないのだが、この一冊に彼の詩のほとんどが網羅されているのではないかと思う。そして、その編集の仕方にも好感が持てる。ただ詩の終わりや詩の始まりがページの境目にきたりしているものは少し見にくいので、そこにもう少し配慮してほしかった。
中原中也の詩で個人的に好きなのは「生ひ立ちの歌」である。一部抜粋してみることにする。

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました
(本文より)


有名な「一つのメルヘン」にしてもそうなのだが、彼の言葉の選び方や書き方など表現全体がほんとに繊細で、とても美しいと感じる。
この本でなくても、是非、中原中也の詩に一度は触れてみてほしい。




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