もみじの本屋   大崎梢

『クローバー・レイン』

クローバー・レイン『クローバー・レイン』 (ポプラ文庫)
著:大崎梢

本書の主人公である彰彦は、千石社という老舗の大手出版社に勤める編集者である。
彰彦は、ある新人賞の贈呈式で自分が担当である家永という作家と久しぶりに会う。そして式の後、酒のまわった家永を開放し自宅まで送り届け、そこで「シロツメクサの頃」という家永の新作の原稿と出会う。
その原稿に感動した彰彦は、ぜひ自分に担当させてほしいと頼み込むのだが。

これまで順風満帆に仕事をしてきた彰彦は、勢いのない作家の原稿を出版するための苦労を知らなかった。輩編集者には
「……千石社にとって今現在の家永さんの原稿は―言い方はひどいけど、ノーサンキューなの。もう、言わせないでよ。この先ブレイクすることがあったら、改めて原稿依頼にうかがえばいい。残念だけど、うちは敷居の高い会社よ。それなりのクラスじゃなきゃ本は出せないわ(本文より)」
と、はっきりと忠告される。
それでも彰彦は、出版に向けて奔走しだすのだが。


編集者の仕事内容など全く知らなかったので、読んでいて新鮮であった。
また登場する人たちのキャラクターもたっているし、彰彦や家永、家永の娘、友人の河上などについて語られる背景も物語のエッセンスとして効いており、全体的に綺麗にまとめられている作品である。

これまで大崎梢の著作は『配達赤ずきん』から続く成風堂のシリーズと『片耳うさぎ』しか読んだことがなかったのだが、本作はそれらとはまた違った味わいがあり、いい意味で裏切られた作品であった。





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『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』

配達あかずきん『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』 (東京創元社)
著:大崎梢

「……誰が、どうやって仕組んだのか、この謎だけは解いてみせて」
「わかりました。本屋の謎は本屋が解かなきゃ、ですね。任せてください」(「配達あかずきん」より)


駅ビルの6階にある書店、成風堂。この書店で働いている杏子と多絵が、お客さんのもちこんでくる、あるいは書店で起こるさまざまな謎を解いていく。

「パンダは囁く」―― 老人が近所に住む男性に買ってきてほしいとリクエストした本はわけのわからない暗号のような言葉だった。
「標野にて 君が袖振る」――コミック‘あさきゆめみし’を購入後、電話で娘に20年前の息子のひき逃げ事件について気がついたことがあると話し、失踪した女性の行方は。
「配達あかずきん」――美容院‘ノエル’に配達した雑誌に挟まれていた盗撮写真。いったい誰が写真を挟んだのか。
「六冊目のメッセージ」――入院中の女性にその母親から頼まれて本を選んであげた書店員。しかし後日確認すると該当する書店員はいなかった。
「ディスプレイ・リプレイ」――成風堂のバイト、夕紀とその友人たちがディスプレイしたコミックコーナーが荒らされた。誰が何のために‥。

もちろんストーリーもよいのだけど、それ以前に本屋が舞台であるということだけでも読んでいて楽しい。それもかなり丁寧に本屋の内側が描かれている。

はじめに杏子が、なんとも頼りないヒントだけで、お客さんの探している本を言い当てる。その様はまさに探偵のようだった。しかし、このようなことは本屋では日常に起きているのだ。それは最後に掲載されている書店人の対談からもうかがえる。

またそこかしこにいろいろな本の名前がでてきて、本好きの心をくすぐる。
ミステリ好きにもおすすめしたいが、それだけでなく本好きの人ならきっと楽しめると思える一冊である。


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(関連書籍)
晩夏に捧ぐ『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』
著:大崎梢 (東京創元社)

サイン会はいかが?『サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ』
著:大崎梢 (東京創元社)




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