もみじの本屋   塩野七生

『コンスタンティノープルの渡し守』

コンスタンティノープルの渡し守塩野七生のルネサンス地中海シリーズ
『コンスタンティノープルの渡し守』 - 絵本 -
文:塩野七生 絵:司修 (ポプラ社)

コンスタンティノープルは現イスタンブールである。
地中海の歴史において重要な町で、コンスタンティノポリス、スタンブール、コンスタンティノーポリ、など時代や場所によりいろいろな呼び名で呼ばれてきた。

コンスタンティノープルとはコンスタンティノーポリスの英語読みで当時、この国と遠くほぼ無関係であったイギリス使われていた呼び方のはずである。
あとがきで英語読みでコンスタンティノーポリと書いているが、どちらかというとこれはイタリア語読みではないだろうか。
まあ、外国語の発音をカタカナで無理やり表記してるから、どれが正しくてどれが正しくはないといったことはないのだろうが。

本書であえてこの「コンスタンティノープル」という表記を用いているところに、遠い国での話に想いを馳せている雰囲気が漂う。


さて、内容であるが、主人公はコンスタンティノープルの金閣湾で渡し舟を漕ぐ十四歳のテオという少年。
テオが漕ぐ舟に5日に一度乗る、テオと同じ年頃の少女ロクサーナとの切ない物語である。

ありきたりといえばありきたりな物語であるが、そのシンプルさがゆえに物語のもつ切なさが胸にすっと入ってくる。





(関連書籍)
塩野七生のルネサンス地中海シリーズ
漁夫マルコの見た夢
『漁夫マルコの見た夢』 - 絵本 -
文:塩野七生 絵:水田秀穂 (ポプラ社)





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『イタリア遺聞』

イタリア遺聞『イタリア遺聞』 (新潮文庫)
著:塩野七生

この本は著者が『海の都の物語』を書く際に調べた内容で、その本に書かれずにこぼれ落ちた話を中心にまとめられた、30編もの短編の収録されたエッセイ集である。
しかし、エッセイといっても軽い気持ちで読むと手に余るだろう。というのも、内容は主に歴史的なことがらであり、かなりしっかりと書かれている。

『海の都の物語』ということで察しがつく人もいるだろうが、ヴェネツィア共和国の話がメインである。また、ヴェネツィア共和国が当時もっとも外交に苦労させられたであろう(オスマン・)トルコについての記述、さらにヴェネツィア共和国から派生してフランスなど様々な国の話が登場する。

とはいえ、肩がこるということでは決してない。例えば、ヴェネツィアのゴンドラはなぜ黒いのかという話、トルコから黒い飲料カヴェの種を持ち帰り西欧初のコーヒー店が開店する話、「オデュッセイア」の話、ベストセラーをつくりだし、世界ではじめて文庫本をつくった男の話、カサノヴァやスパイの話、レオナルド・ダ・ヴィンチなど芸術家の話、聖地巡礼という名の観光の話などなど、興味ひかれる話がたくさんある。

また、トルコのスルタンとハレム(ハーレム)の話もとても興味深い。想像するような、ただただ優美で官能的な世界などではなく、良くも悪くももっと人間味あふれた世界なのである。そんなハレムの知られざる実態、そしてそこに生きた女性たちが描かれている。

この『イタリア遺聞』の単行本の初版発行は1982年だというのに、これらの話は決して色褪せていない。それどころか新鮮でさえある。上に挙げたのは一例であり、まだまだおもしろい話が盛りだくさんなので、興味のある人は是非読んでみてほしい。




(関連書籍)
海の都の物語 上海の都の物語 下

『海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年(上)』(塩野七生ルネサンス著作集4)
『海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年(下)』(塩野七生ルネサンス著作集5)
著:塩野七生 (新潮社)

『ヴェネツィアの歴史―共和国の残照』 著:永井三明 (刀水書房)
『ホメロス オデュッセイア (上)』 著:ホメロス 訳:松平千秋 (岩波文庫)
『ホメロス オデュッセイア (下)』 著:ホメロス 訳:松平千秋 (岩波文庫)
『トプカプ宮殿の光と影』 著:N.M. ペンザー 訳:岩永博 (りぶらりあ選書)
『ハーレム―ヴェールに隠された世界』 著:アレヴ・リトル・クルーティエ 訳:篠原勝 (河出書房新社)




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