もみじの本屋   菅浩江

『末枯れの花守り』

末枯れの花守り『末枯れの花守り』 (角川文庫)
著:菅浩江

「朝顔」、「曼珠沙華」、「寒牡丹」、「山百合」、「老松」の5つの短編からなる。

この世ならざる美しい面持ちの長世姫、常世姫。彼女たちは、花に想いを託すものたちの花心(カシン)を目当てに「永遠」を説いて、異界へと誘う。
姫君がたから「鬼」と呼ばれおそれられるのは、青葉時実。日照間さまの家臣である彼は五郎、十郎兄弟を従え、花と花心を守る花守りなのだ。

5つの話の中で好きなのは、唯一人ではないものの花心が狙われる「曼珠沙華」。
狐の坊やが、曼珠沙華が咲いたら来ると約束したみねこちゃんという女の子を待っている。
その想いは曼珠沙華に託され、その花心を姫君がたに狙われるのである。
姫君がたも時実も「今回は常とは異なる」というとおり、結末も他の4つの話とは違った形で描かれておりおもしろかった。

解説では夢枕獏が「鏡花の遺伝子」と評し、泉鏡花の物語の属性と同じ属性をもつと書いている。
泉鏡花の作品を読んだことがないので、それについては何とも言えないが、この本の世界観、登場人物、そして文章の端々には「和」の美しさがあふれている。耽美で艶やかな世界はまことに京都出身の菅浩江らしい。
是非、この雅な世界観を味わってみてはどうだろうか。


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『永遠の森 博物館惑星』

永遠の森『永遠の森 博物館惑星』 (ハヤカワ文庫)
著:菅浩江

littleappleさんの「備忘録」の記事を読み、読んでみたくなった本。

地球と月の重力均衡点のひとつラグランジュ3に浮かぶ巨大博物館苑、それが‘アフロディーテ’である。
主人公の田代孝弘はこの‘アフロディーテ’の3つの専門部署を取りまとめる‘アポロン’の学芸員のひとり。そして直接接続者のひとりであり、データベース・コンピューター‘ムネーモシュネー’とつながっている。
今日も案山子こと所長のエイブラハム・コリンズに無理難題をたのまれる。

ほかにもいくつかSFとしての設定はあるが、ここまでに書いたことを頭に置いて読んでいれば、SFということを意識せずともすんなり入り込める内容だ。
しかし、こういった背景があるからこそ描かれるストーリー展開には感心させられる。

「芸術にこめられた人びとの想いに触れていく……。優しさと切なさの名手が描く、美をめぐる9つの物語。」(カバー裏表紙より)

「物」の素晴らしさ、技術の高さ、そして人の想いなどに触れながら、「美とは何か」ということもひとつのテーマとして追求していく。
しかし物語の本質はそういったところではない。
これ以上書くと読んだ時の楽しみが減ってしまいそうなので、実際に読んでみて自分自信で確認して欲しい。

ここからは余談になってしまうが、『ななつのこ』『魔法飛行』などのイラストも描いている菊池健のやわらかな絵が素敵だ。

そして、地道な作業を繰り返し、「物」そのものを探したり、「物」の背景を探っていったり、学芸員という仕事も探偵と似ているのかもしれないと読んでいて思った。
推理小説というわけではないが、そういう意味では推理小説好きの人もすんなりと入り込める物語かもしれない。


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