もみじの本屋   笹生陽子

『ぼくらのサイテーの夏』

ぼくらのサイテーの夏『ぼくらのサイテーの夏』 - 児童書 -
著:笹生陽子 (講談社文庫)

粘りつくような暑さが続く夏、小学6年の1学期の終業式の日、学校で「階段落ち」をして遊んでいた。
主人公であるぼく(=桃井)は四組で、相手は二組の奴らだった。二組の栗田に九段落ちをかっこよくキメられて勝負に負けた。さらに桃井はケガまでしてしまった。それだけならまだしも、罰として夏休み中プールの掃除をする羽目になってしまう。しかも成り行きから栗田と二人で。

友達との関係やそれぞれの家庭の問題などを織り込みながら、「ぼく」の成長が丁寧に描かれている。
デビュー作ということでしかたがないのかもしれないが、桃井家が好転していく様子や栗田家で起こることなどは多少ディテールの甘さを感じてしまった。しかし、そんなことが気にならないくらい勢いのある展開で、また児童文学はこうでなくてはと思わされるほどのさわやかな読後感をもっている。

作中にでてくる桃井の父と栗田の父の時間に関する考え方も物語のエッセンスとしてうまく効いている。



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コミュニティ( 本・雑誌 | 児童書

『ぼくは悪党になりたい』

ぼくは悪党になりたい『ぼくは悪党になりたい』 (角川文庫)
著:笹生陽子

生きたいように生きる人たちの中で、ぼくだけが貧乏くじをひいているのではないだろうか?(裏表紙より)

主人公は兎丸エイジ、17歳の高校生。弟の面倒をみながら家事全般をこなすしっかり者。
家庭に父親はいない。母親は自由奔放、バイヤーをしていてよく海外に行き長期間家を空ける。弟のヒロトは、実は異父の兄弟。ちっとも言うことを聞かない腕白坊主。

エイジの友人の羊谷や、羊谷の彼女のアヤ、ヒロトが病気になったとき助っ人としてやってきた杉尾さん。どの登場人物もしっかりとそのキャラクターがたっている。

いつものように母親が2か月間海外へとでかけた。今回もいつものように弟の面倒をみて、いつものように家事をして、いつものように母親の帰りを待つ日常を過ごすはずだった。
だけど、弟の病気から少しずつ、少しずついつもどおりの日常が崩れていった。

物語はテンポよく進んでいって、どんどん先を読まされる。
読んでいて感じたのが、エイジの不満のもとである母親の言動に対する解決や、エイジ以外の人物の心理が描かれていないことのすがすがしさである。そこが現実はこんなものだなと思えて、リアリティさえ感じた。
そして、その現実のなかでエイジがしっかりと成長していくあたりは、とてもうまいと思う。

エイジが映画「ギルバート・グレイプ」の主人公に感情移入しているが、この映画を見ているとよりこの本を楽しめるだろう。


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(関連商品)
ギルバート・グレイプDVD「ギルバート・グレイプ」 (角川エンタテインメント)
監督:ラッセ・ハルストレム 
主演:ジョニー・デップ、ジュリエット・ルイス、レオナルド・ディカプリオ




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コミュニティ( 本・雑誌 | ブックレビュー

『楽園のつくりかた』

楽園のつくりかた『楽園のつくりかた』 - 児童書 -
著:笹生陽子 (角川文庫)

この物語のの主人公の名前は星野優。
エリートコースまっしぐらにつきすすむという人生設計をしている、中学2年生。受験競争に負けないために勉強に励む偏差値人間。
そんな優は突然、母親と一緒に、父親の実家に引っ越すことになる。
当の父親は海外赴任で三年前からシンガポールに住んでいる。

引っ越し先はド田舎で、祖父は少し痴呆気味で優のことを父親の名で呼ぶ。
学校には同級生は3人だけ。サルのような男の子に、前髪で目元も見えずマスクをしている女の子、そして色白で美人でアイドル系の子。
優にとっては最悪の環境ということになる。
そんな中、唯一の救いは自分のことを理解してくれている父とのEメールのやりとりなのだが‥。

この著者の作品は、あっさりさっぱりしていて、ストーリーもテンポよく進んでいくので読みやすい。
そして読後感もすっきりとしたものなので、途中何が起ころうと、安心して読んでいられる。

以下、蛇足的感想。
実は住む土地によって、人の価値観さえも大きく変わってしまう。
都会に住んでいた主人公が田舎へ行くことで、はじめはまわりとの価値観の違いにとまどっていたのだろう。
しかし、そこに住むことで、その土地の風土や文化に触れていることによって徐々に価値観そのものが変わっていってしまうのだ。
なんていうことを考えたが、この主人公の場合は価値観の相違だけでなく田舎、いやむしろ引っ越し先にとけ込めない理由があったので微妙なところだが。
それでも、田舎のおおらかな空気というものはいいなと思う。

(TBさせてもらった記事)
→ 楽園のつくりかた/笹生陽子 (ディックの本棚)


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コミュニティ( 本・雑誌 | 児童書

『きのう、火星に行った。』

きのう、火星に行った。『きのう、火星に行った。』 - 児童書 -
著:笹生陽子 (講談社文庫)

「おれの名前は山口拓馬。六年三組、堀学級の出席番号二十六。趣味は、なんにもしないこと。特技は、ひたすらサボること。」(本文より)

この山口拓馬が、この本の主人公。
ある時体育大会の選手に選ばれてしまう。
だけど、練習ももちろんほとんどやる気はない。

選手に選ばれた日、拓馬が家に帰ると弟の健児が家に帰っていた。
体が弱く、療養のためにおじさんのところで暮らしていた弟が7年ぶりに家に戻ってきたのだ。

拓馬にとっては鬱陶しい弟の健児。同じハードルの選手になって一生懸命練習するでくちゃん。同じ塾にやってきた谷田部は嫌味なクラスメイト木崎にべったりな奴。
にわかに騒々しくなってくる拓馬の周囲。さてどうする山口拓馬。

爽やかな読後感、児童書はやはりこうでないとと思う。
最近何をやってもつまらないなんて人、たまにはこんな本を読んでみるのも悪くないのでは。

(TBさせてもらった記事)
→ きのう、火星に行った。(HappyTalk@Cooking)
→ 『きのう、火星に行った。』 笹生陽子(ばらいろの。。。)


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