もみじの本屋   小路幸也

『空を見上げる古い歌を口ずさむ』

空を見上げる古い歌を口ずさむ『空を見上げる古い歌を口ずさむ』 (講談社)
著:小路幸也

庭の桜の木にようやく蕾がついた日、凌一が仕事から帰ると、泣きはらしたような妻と捨てられた小犬のような顔をした息子の彰がいた。
「どうしたの」という問いに対して返ってきた言葉は「……のっぺらぼう」だった。
彰はまわりにいる人みんながのっぺらぼうに見えるようになったというのだ。
そこで凌一は「兄さんに、会わなきゃ」と思う。

二十年も前から一度も顔を合わせていない兄。
兄が姿を消す前、凌一に「いつか、お前の周りで、誰かが〈のっぺらぼう〉を見るようになったら呼んでほしい」と言ったのだ。
兄に連絡をとると、明日にでも来るという。
そして次の日、はるばる飛行機で、鞄一つもたずに兄の恭一はやってきた。

そして恭一は語りはじめる。
小学生の頃にあった奇怪な出来事を。

読みはじめてすぐに、物語に引き込まれてしまう。
そして、どんどんと先が気になってしまう展開、とても巧い。
いろいろと不可解な事件が起こり、途中まではまさに推理小説を読んでいるような感覚である。
雰囲気はどこかノスタルジックで、古き良き昭和というものも感じさせる。

終盤はかなりの急展開、推理小説風のストーリーから一転、少し現実離れしたような人たちが登場してきてまた違ったスタイルの小説になっていく。
推理小説好きの人は終盤で評価を下げてしまうかもしれないが、はじめからそういう作品であるとわかっていたらまた違うかもしれない。

登場人物もとてもいい。とくに恭一の友だちたちはすごく個性あふれるいいキャラクターだと思う。
「タンカス山へ」の他にも、もう少し子どもたちの活躍のシーンがあってもよかったのではと思うのは贅沢であろうか。

小路幸也のデビュー作にして、第29回メフィスト賞受賞作品なのだそうだ。
関連作品の『高く遠く空へ歌ううた』も気になるところ。

(TBさせてもらった記事)
→  「空を見上げる古い歌を口ずさむ」 小路幸也 (今日何読んだ?どうだった??)


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(関連書籍)
高く遠く空へ歌ううた『高く遠く空へ歌ううた』
著:小路幸也 (講談社)




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