『絵のない絵本』

絵のない絵本『絵のない絵本』
著:アンデルセン 訳:矢崎源九郎 (新潮文庫)

「月」が、ある貧しい絵描きのために話をしてあげる。
その絵描きは「月」からきいた話を言葉という筆で描いていく。

いろいろな時代、いろいろな場所での記憶。
人びとの喜びや悲しみ、希望、苦悩、すべては月の光りが照らしだした一場面である。
舞台はイタリア、スウェーデン、オーストリアなどヨーロッパ各地をはじめ、インド、中国、アフリカにまで広がる

月が語ってくれる話ひとつひとつが、夜空に瞬く星のようにきらきらと輝く。
それをゆっくりと眺めているだけで、読者もその物語を手の届くものとして感じることができるのではないだろうか。


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『すべての小さきもののために』

すべての小さきもののために『すべての小さきもののために』
原書:『All the Little Animals』
著:ウォーカー・ハミルトン 訳:北代美和子 (河出書房新社)

「それはみんな魔法っぽかった」

主人公は31歳。ボビーという名前の男の子。
‘デブ’から逃げてきて、トラックに乗せてもらいコーンウォールに向かっている。
トラックが事故を起こして、小さな男と出会う。
男の名はミスター・サマーズ。サマーズさんだ。
サマーズさんは車にひかれた小動物を埋める。それが仕事だという。
ボビーはサマーズさんのあとを追い、仕事をさせてくれと頼む。

ボビーはサマーズさんのことを慕い、サマーズさんもボビーのことを気にかける。
「ほかの人間たちは生きものを殺す。わたしは埋める。ドブネズミやハリネズミや小鳥やハリネズミやカエルやそれにカタツムリだって埋める」
「あれは命だということだ、坊や。雌牛の形をした命。わかるかな?」

サマーズさんはボビーにたくさんのことを伝える。
一方で、アルコールへの依存、執拗なほどの車への嫌悪、小さな動物の命を奪うものすべてに対する軽蔑などから、時折サマーズさんの中の翳りのようなものが見え隠れする。

ボビーは徐々に自分で何かをするということを覚えていく。
しかしいざというときに、自分が無力で小さな人間であるということを実感する。
そしてボビーはつぶやく。
「ああ、人間というのは、こちらがほんとうに助けを必要としているとき、なぜ助けてくれないのだろう?」
そして‘デブ’から、大きな何かから逃げ続けようとする。

本書のタイトルの「ちいさきもの」、その中にはおそらくボビーやサマーズさんのことも含まれている。
ボビーやサマーズさんが「ちいさきもの」を見えないところに動かしてやるように、ボビーやサマーズさんにも救いはあったのだろうか。

表紙やタイトルからは、ほんわかとかわいらしい物語を思い浮かべるかもしれない。
しかし、騙されてはいけない。
ストーリーは衝撃的で、残るものは悲しさや切なさ、そんな物語だ。
全体的にどこか霧の中のようでぼやけた感じがあり、それはまさに魔法っぽかった。

(TBさせてもらった記事)
→ 『すべての小さきもののために』ウォーカー・ハミルトン (ツンドク本いっそ一掃)
→ すべての小さきもののために (まっしろな気持ち)


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