もみじの本屋   吉田篤弘

『つむじ風食堂の夜』

つむじ風食堂の夜『つむじ風食堂の夜』 (ちくま文庫)
著:吉田篤弘

いつもつむじ風がひとつ廻っている十字路の角に、ぽつんと食堂はあった。
食堂のあるじは「名無しの食堂」を気取っていたが、客たちの誰もが、つむじ風食堂と呼んでいた。

この物語の主人公は雨降りの先生。

とても静かで、でもどこか懐かしい、そんな物語。



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『十字路のあるところ』

十字路のあるところ『十字路のあるところ』 (朝日新聞社)
著:吉田篤弘 写真:坂本真典

郷愁を誘う6編の物語。読んでいると、延々と繰り返される十字路、壁に横たわる自転車、影の落ちるアスファルト、植物の絡みつく古い壁、そんな情景が浮かんでくる。
そして、まるで迷路にでも迷いこんでしまったような感覚に陥ってしまう。

すこし物語の雰囲気を味わってもらうため引用させてもらおう。

 その幻影から目を逸らすためなのか、それとも、より微細に幻影を立ち上がらせるためなのか、私は雨にもめげず、むしろ雨に導かれるように意味もなく十字路を行き来していた。不思議にも、それまで見過ごしていたものが、いちいち目の端に引っ掛かり、何度も立ち止まってなかなか前に進めない。(「雨を聴いた家」より)



 そこにもまた影が幾重にも折りかさなっている。
  もちろん、この世はどこに言っても影がつきまとうが、ひとつひとつの影に、柔らかさ、鋭さ、甘味、渋味、優しさ、怖さ、その他ありとあらゆるものが孕まれ、西陽の変転で甘さに支配されたり、かと思うと吸い込まれるような哀しげな何ものかに統一された。(「水晶萬年筆」より)



物語の後に続くのは「十字路の探偵」。そこでは、モノクロームの写真によって、物語を語り終えた静かな町をうつしだす。
そして、たしかにその物語はそこにあったのだと語りかけてくれる。


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『という、はなし』

という、はなし『という、はなし』 (筑摩書房)
文:吉田篤弘 絵:フジモトマサル

フジモトマサルが「読書の情景」というテーマからイラストを描き、そのイラストに吉田篤弘が文章をつけるといった形でできあがった24編の作品。
「あとがきのあとがき」で挿絵ならぬ挿文と表現していたが、なかなかおもしろい試みだと思った。

読書に関するテーマのイラストに文章をつけているので、話の方も当然本や読書に関連したものが多く、読んでいると「本を読む」ということが楽しくなってくる。
内容も、さりげなく何かに気づかされるもの、オチで驚かされるもの、読んでいてまるで自分のことのようなもの、いろいろな話がつまっていて飽きない。
1編が3ページ程度と短く、どんどんと読み進められるのもよい。

イラストは動物たちが本を読んでいる姿が描かれていて微笑ましい。そしてフルカラーなのも嬉しい。
イラストを一枚一枚じっくりと見ていくのもまたよいかもしれない。

24の話の中で、個人的に興味深かったのは、「話の行き先」と「とにかく」という話。
「話の行き先」の‘小説=行き先がわからないもの’という車の運転手との会話や、「とにかく」の‘熱心’‘熱中’‘夢中’‘虜’についての話がおもしろかった。






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