もみじの本屋   野中ともそ

『宇宙でいちばんあかるい屋根』

宇宙でいちばんあかるい屋根『宇宙でいちばんあかるい屋根』 (角川文庫)
著:野中ともそ

新しくおとずれる夏の気配に出会うたび、ふいに思い出す。星ばあとの場面。そこは、いつでも夜のなかだ。夜というより、ヨルと書くほうが似合うような。(本文より)

主人公のつばめは、恋の悩み、家では少し息苦しさを感じている、どこにでもいそうな中学生の女の子。
つばめは週に2回、書道教室に通っている。そして、教室が終わったあとはいつもそのビルの屋上にいく。そこはつばめだけの貸切りのつばめの場所。心をたいらかに戻す場所だった。
そこに魔女のほうきならぬキックボードに乗っかって現れたのが‘ほしばあ’だった。

口が悪くて何でもずけずけと言うほしばあ、食べ物をねだってくるほしばあ。でもそんなほしばあのペースにいつの間にか引き込まれているつばめ。そしてほしばあも理不尽なことばかり言っているようで、実はつばめのことを思っているということが感じ取れる。

「あんたの知らないところで守られつづいてるもんもあるってことだ。知らないもんはないことだと決めつける。そんな狭い心を無知ってんだ」

「だれだってもって生まれた力はあるさ。その力を目いっぱい使って生きるんは立派なことだ。だがな、忘れちゃいけんのは、その力をどう使うかってことじゃない。どんな強さもおよばない重くておっきいもんが、生きてるうちにゃ必ずころがってくる」「重しにとりこまれるな。一緒になって沈みこんでもいいから、もう一度浮きあがれ。いいか、悲しみも喜びもパチンコと違ってうちどめってもんがない。とりこまれたら負けさ」

(本文より)

そんなほしばあとの触れ合いのなかで、徐々につばめも変わっていく。
星空を眺めているような、静かでやさしい物語。


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