もみじの本屋 ●ハ行の作家

『おいしい水』

おいしい水『おいしい水』 (岩波書店;Cofee Books)
著:原田マハ 画:伊庭靖子

十九歳の私。
きらめく光のさなか、その瞬間を生きているなんて、ほんの少しも思わないほど、青く浅い春の日々を呼吸していた。

たった85ページの中につまった、一つの淡い青春の物語。
輸入雑貨の店でアルバイトをしている19歳の女の子がお気に入りのカフェで見かける一人の青年カメラマンに恋するお話。
神戸の雰囲気、阪急電車、写真、音楽、知っている人には鮮明にイメージが浮かぶアイテムが満載である。
そして伊庭靖子の絵も透明感があり美しい。

Cofee Booksということで、スタイリッシュにカフェでさらっと読み切るにはちょうどいい本。
しっかり読みたい人にはやや物足りないかもしれない。

私事ではあるが、以前読んだ本と同じタイトルだったのでやや警戒しつつ読んだのだが、なかなか楽しく読めて一安心した。






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『十五歳の夏』

十五歳の夏『十五歳の夏』 (文芸社)
著:方村美博

帯に「“恋に癒される”なんて、知らなかった……」と書いてあり、「十五歳の夏」というタイトルの割に実は大人のストーリーとドキドキしながら(という年でもないが)本を開いたら、十五歳の瑞々しくて甘酸っぱい世界が広がっていた。

ママとパパが離婚問題でもめている間、おばあちゃんの家で過ごすことになった伊摘。
そんな伊摘は田舎でケンという少年と出会う。

離婚というテーマも扱っているが、全体としては重くもなく暗くもなく、少女の視点でとても軽やかにいっそ清々しく描かれている。
離婚以上に少女の田舎での体験(成長?)がメインテーマだと思うのだが、その点では欲を言えばもう少し少女の成長が徐々に、だがはっきりとみられるとよかったと思う。

百十数ページで字も大きくとても読みやすい。おそらくたいていの人は1時間もあれば読み終わる程度の文章量ではないだろうか。もちろん起承転結はきちんとしており、とてもテンポ良く読み進めることができる。人によっては物足りなさを感じるかもしれないが、短編という感覚だろうか。

児童文学を読んだような感覚であったが、タイトルが「十五歳の…」とあるので、著者も中学生くらいの年代の人をターゲットに考えているのかもしれない。たしかに内容だけでなく読みやすさも含めその年代(小学生高学年から中学生)に特に勧めたい作品である。

処女作ということで、たしかに書き込みが甘いなと思う点もあったが、これからの活躍に期待したい。





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『ろくべえまってろよ』

ろくべえまってろよ『ろくべえまってろよ』 (角川文庫)
著:灰谷健次郎

絵本や児童書として出版されている8つの話が収録されている。
どれも惹かれるモノがある話なのだが、やはりこの本のタイトルになった「ろくべえまってろよ」が好きだ。
この話は子どものころに絵本で何度も読んだ記憶があって、活字だけなのになんとなくその情景が絵本の絵とともに浮かんでくる。

『兎の目』や『太陽の子』などで灰谷健次郎の話はなんかすこしとっつきにくいなって思った人でもこの本ならすんなり読めるのではないだろうか。
ただ挿絵がないので、絵本や児童書の感覚で読もうとするとすこし寂しいものがある。
物語を楽しみたい人にはおすすめ一冊だ。


(収録作品)
ろくべえまってろよ
マコチン
マコチンとマコタン
なんやななちゃんなきべそしゅんちゃん
子どもになりたいパパとおとなになりたいぼく
しかられなかった子のしかられかた
さよならからみきぼうはうまれた
ふたりはふたり



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(関連図書)
『ろくべえまってろよ』 著:灰谷健次郎 絵:長新太 (文研出版)
『マコチン』 灰谷健次郎 (あかね書房)
『マコチンとマコタン』 灰谷健次郎 (あかね書房)
『ふたりはふたり』 灰谷健次郎 (偕成社)
『なんやななちゃん なきべそしゅんちゃん』 灰谷健次郎 (文研出版)
『さよならからみきぼうはうまれた』 灰谷健次郎 (フレーベル館)




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