もみじの本屋 2005年10月

『ジョニーになった父』

ジョニーになった父『ジョニーになった父』 (集英社文庫)
著:谷村志穂

ある日突然、父がジョニーになった。まさにこの言葉の通りの話である。
もちろん家族は唖然茫然、状況がのみこめない。ジョニーになった父は自由奔放、勝手気ままに生活する。ようやくまわりが父がジョニーであることに慣れてきたら、ジョニーはまた別の騒動を起こす。
この本を読んで‘ジョニー’になりたいと思った人はたくさんいるだろう。そしてそんな人たちからみるとジョニーはヒーローである。
しかしこの本は、父、母、息子、娘、または働いている人、専業主婦(夫)、妻、夫、など読む人の立場や状況によって読む時の視点や印象、感想がまったく違ったものにもなるだろう。
例えば、小説の中で一人称として登場する‘私’こと娘の美弥子に共感したならば、父の無責任さに対して腹だたしく思うだろう。また美弥子と弟の鉄馬の関係もとても好ましいものであり、うらやむ人もいるかもしれない。
『いつものお茶、いつもと違う猫』の河合雅雄との対談の中で著者が述べている、「不良になる」という持論をうまく描いている作品だ。
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『りかさん』

りかさん『りかさん』 (新潮文庫)
著:梨木香歩

主人公のようこはリカちゃん人形が欲しかったのだ。そしておばあちゃんに頼んだが、送られてきたのは真っ黒の髪の市松人形だった。そう、この市松人形がこの本のタイトルであるりかさんだ。
『からくりからくさ』を読んで、りかさんのはなんでも知ってて物静かな知的な感じなのかなと、イメージを勝手にふくらませていたのだが、想像とはちがって意外とお茶目な人形だった。
『からくりからくさ』との関連で何度もぞくっとさせられる部分もあった。例えば‘アビゲイル’を抱いたマーガレットという女性のことや、‘三つ折れの衣装人形’がもともとS市の井之川さんのところにあったということなどである。これ以上書くとネタバレになってしまうので控えるが、『からくりからくさ』に内包されている宿世の縁がこの『りかさん』にも深く及んでいるのである。
もちろん、『からくりからくさ』を読んでいなくても、十分に楽しめる内容であるし、この本を読んでから『からくりからくさ』を読んでみるのもいいだろう。

「ミケルの庭」は『からくりからくさ』の後の話である。
『からくりからくさ』から読んだものとしては、再び、蓉子や与希子や紀久に会えるのは嬉しい限りである。
『りかさん』という本の中で「りかさん」のあとに収められていることで、蓉子が紀久の背中を撫でる場面がとても生きている。そして、『からくりからく』の中でみんながいっていた蓉子の(慈しむとか尊ぶとかそういったものが自然に出るという)特性がとてもよくでているワンシーンであると思う。
ラストの場面でミケルがつかまる蔓はやはり唐草なのであろうか。
「りかさん」とは違い、この「ミケルの庭」に関しては、『からくりからくさ』を読んでいないと、おもしろさが半減してしまうかもしれない。

(過去の関連レビュー)
→ 『からくりからくさ』

(TBさせてもらったblog)
→ 「りかさん」「からくりからくさ」梨木香歩(日だまりで読書)
→ りかさん 梨木香歩(くろにゃんこの読書日記)
→ りかさん / 梨木香歩(活字中毒)


(関連書籍)
からくりからくさ『からくりからくさ』 梨木香歩 (新潮社文庫)
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『しあわせな葉っぱ』

しあわせな葉っぱ『しあわせな葉っぱ』 (新潮文庫)
著:おーなり由子

「  かみさま
   どうか
   どうか
   ハッピーエンドに
   してください      」(見開きより)


目が覚めると頭からリボンのような葉っぱがはえていた。風が吹くと‘しゃらしゃら’ゆれるかわいい葉っぱが。
著者のやわらかでかわいらしい絵と文が、目に心に染みこんでくる本。
そして淡い緑色と茶色と紺色がとっても綺麗な本。個人的には星空のページがお気に入り。
「あとがき」で著者自身もかいているけど、いつも見ているのに見えないもの、いつも感じているのに感じていると気づかないこと、この本を読むとそんなことに気づけるかもしれない。

→ しあわせな葉っぱ (おーなり由子HP「Blanco」より)
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『ななつのこものがたり』

ななつのこものがたり『ななつのこものがたり』 - 絵本 -
著:加納朋子 絵:菊池健 (東京創元社)

おかあさんが寝る前の男の子にお話をしてあげる。それはおかあさんが昔読んだ「ななつのこ」(『ななつのこ』の作中作)という本のお話。
「ななつのこ」は、‘はやて’が村で起こった出来事を‘あやめさん’に話して、‘あやめさん’はその出来事の不思議をといてしまうお話だ。
すいか畑の絵や竹やぶに彼岸花が咲いている絵、表紙も含め菊池健さんのやわらかでやさしい絵がとても素敵である。
作中では7つのお話を一晩にひとつずつしているのだが、自分が読むときにも寝る前にひとつずつ読んでいくといいと思う。お話の最後でおかあさんが男の子に「おやすみ」という言葉をかけるのが読んでいる自分にも言ってくれているような気がする。そして読み終えたあとの穏やかな気持ちのまま眠りに入れるように思う。
蛇足になるが、『ななつのこ』や『魔法飛行』などを読んだ人が気になるのはやはり、おかあさんが誰かということだろう。だけど、それも作中にヒントが隠されているので、探してみると楽しい。

(過去の関連レビュー)
→ 『ななつのこ』
→ 
『魔法飛行』


(関連書籍)
ななつのこ『ななつのこ』 加納朋子 (創元推理文庫)

魔法飛行『魔法飛行』 加納朋子 (創元推理文庫)

スペース『スペース』 加納朋子 (創元クライム・クラブ)
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コミュニティ( 本・雑誌 | 絵本

『世にも美しい数学入門』

世にも美しい数学入門『世にも美しい数学入門』 (ちくまプリマー新書)
著:藤原正彦、小川洋子

藤原正彦と小川洋子の対談を本にしたものである。対談なので新書としては少々軽めだが、読みやすい。
全体を通しては数学の美しさ、日本人の美意識、西洋とアジアの数学に対する見方などについていろいろな側面から述べられている。
本書は大きく2部で構成されているおり、「第1部 美しくなければ数学ではない」では、まず『博士の愛した数式』についての多少の言及がある。そして俳句と数学のについてなど、文化と数学のつながりといったことについて語られており、そういった側面から数学の美しさを見つめなおさせてくれる。ちなみにこの第1部は資生堂のトークショー「ワークフライデー」を元にしたものなのだそうだ。
「第2部 神様が隠している美しい秩序」では、多少の数式と、さまざまな数学者のエピソードなどをもとに実際にどのように数学が美しいのかということを少し見せてくれる。
第2部の数式は、基本的には高校数学までわかっていればそれなりに理解はできるが、面倒であれば読み飛ばしても差し支えない。数式は見るだけでも嫌という人にはその部分は気にせず読むことをオススメする。
この本を読んで多少なりとも中学や高校で教わる数学のイメージが変わるかもしれない。ただし数学が好きで、いろいろな本も読み漁っているという人には少々物足りないかもしれないのでご注意を。

(TBさせてもらったblog)
 → 世にも美しい数学入門(まっしろな気持ち)
 → 美しき数学者(千華の気まぐれ日記)



(関連書籍)
博士の愛した数式『博士の愛した数式』 小川洋子 (新潮社)

零の発見『零の発見』 吉田洋一 (岩波新書)

フェルマーの最終定理『フェルマーの最終定理』 サイモンシン (新潮社)
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