もみじの本屋 2005年12月

『博士の愛した数式』

博士の愛した数式『博士の愛した数式』
著:小川洋子 (新潮文庫)

物語は家政婦の視点で描かれている。
主要な登場人物は博士、家政婦、家政婦の息子の√(ルート)の3人。
また素晴らしい脇役として博士の義姉。それにあけぼの家政婦紹介組合の存在も重要だ。

博士の記憶はぴったり80分しかもたない。頭の中に80分のビデオテープ一本しかセットできない状態なのだ。
つまり毎日家政婦が家を訪れると初対面の挨拶が繰り返される。そんな博士の服にはメモがぎっしり。

博士はもともと数学の研究者だったので、数学の話題がのぼることが多い。友愛数や完全数、虚数に三角数にオイラーの公式‥。
どの話も魅力的で輝いている。家政婦の息子に√というあだ名をつけたのも博士である。

3人が毎日繰り返される触れあいの中で、お互いにあたたかいものを築き上げていく。そして時々起こる事件に3人は様々なことを感じ、喜び、悲しみ、そして悩む。

淡々と書かれている中での微妙な変化、家政婦の心理的な動きが巧みに描かれる。数学を題材にしたちょっと変わった純文学作品。

(TBさせてもらったblog)
→ 博士の愛した数式(備忘録)
→ 小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫(活字の宇宙へと)
→ 小川洋子『博士の愛した数式』(itchy1976の日記)
→ 『博士の愛した数式』売上No.1に(Aliiyブログ)


(過去の関連レビュー)
→ 『世にも美しい数学入門』


(関連書籍)
『世にも美しい数学入門』 藤原正彦、小川洋子 (ちくまプリマー新書)




  小川洋子 トラックバック:5 コメント:4

『リクエストは星の話』

リクエストは星の話『リクエストは星の話』 - 児童書 -
著:岡田淳 (偕成社文庫)

「シールの星」、「箱のなかの星」、「ポケットの星」、「スター」という4つの星のでてくる話がでてくる。どれも独創的な岡田淳の世界がひろがっており、じわりと心にしみる。

それぞれの話の中にはたくさんの星が出てくる。ほんものでないシールの星、ほんものかどうかわからない黒い石の星、コンペイトウのようなほんものの星、そして流れ星でスターになったドーフィー。

「シールの星」のトイレのシーンや「箱の中の星」の意外な結末、そして愉快でせつない「スター」、どれもおもしろいのだが、4つの話の中で一番好きなのは「ポケットの星」だ。
サッコと男のやりとりや、おはじきをするシーンがとても魅力的である。また「イエイ!」という仕草も目に浮かんできて、可笑しい。
関連記事




  岡田淳 トラックバック:0 コメント:0
コミュニティ( 本・雑誌 | 児童書

『サンタさんってどんなひと?』

サンタさんってどんなひと?『サンタさんってどんなひと?』 - 絵本 -
絵:梅川紀美子 (サンリオ)

34人の子どもたちからサンタさんへ手紙がふんわりした絵とともに本になった。
「いい子にしてるよ」とか「プレゼントちょうだい」といった内容の手紙が多くて、そんな子どもの純粋さが微笑ましい。
サンタクロースはきっと今年もそんな子どもたちの家をめぐるのだろう。


(関連書籍)

サンタさんってどんなひと?『だれも知らないサンタの秘密』
著:アラン・スノウ (あすなろ書房)

サンタさんってどんなひと?『サンタのおもちゃ工場』
著:たむらしげる (メディアファクトリー)

サンタさんってどんなひと?『Silent Night』
著:石田衣良 (小学館)
関連記事




●絵本 トラックバック:0 コメント:0

『銀河鉄道の夜 ※最終形 ※初期形[ブルカニロ博士篇]』

銀河鉄道の夜『銀河鉄道の夜 ※最終形 ※初期形[ブルカニロ博士篇]』(ますむら版宮沢賢治童話集)
著:ますむらひろし 原作:宮沢賢治 (偕成社)

この本はますむらひろし独特のあの猫の絵で描かれる「銀河鉄道の夜」のマンガである。それも最終形(第四稿)と初期形(初期形三 - 第三稿)の両方が描かれている。
マンガといっても原作に忠実にそして細やかに会話や場面設定などがされているので、「銀河鉄道の夜」の世界観を崩さずに物語を楽しむことができるだろう。

気になるのはやはり初期形である。ますむらひろしは「ブルカニロ博士篇」と名付けているが、これを読むことによって、いま一般に知られている「銀河鉄道の夜」の意味のわからなかった部分が少なからず理解できる。
ブロカニロ博士の言葉、最終形では削られてしまった部分を読むことで、見えてくる部分があるのだ。
そして、あとがきでますむらひろしが書いている言葉を借りると、「賢治の抱えた『科学と心』の入り交じった視線の風景」というものを垣間見ることができる。


(関連書籍)
『イーハトーブ乱入記』 著:ますむらひろし (ちくま新書)

カイロ団長 洞熊学校を卒業した三人『カイロ団長 洞熊学校を卒業した三人』
(ますむら版宮沢賢治童話集)
著:ますむらひろし 原作:宮沢賢治 (偕成社)

『グスコーブドリの伝記―猫の事務所・どんぐりと山猫』
著:ますむらひろし 原作:宮沢賢治 (扶桑社文庫)
『風の又三郎―雪渡り・十力の金剛石』
著:ますむらひろし 原作:宮沢賢治 (扶桑社文庫)
関連記事




●マンガ トラックバック:1 コメント:7

『世界で一番の贈りもの』

世界で一番の贈りもの『世界で一番の贈りもの』 - 絵本 -
原書:『The best christmas present in the world』
著:マイケル・モーパーゴ 絵:マイケル・フォアマン 訳:佐藤見果夢 (評論社)

‘わたし’は古く傷んだロールトップの机を購入した。そして、修理している最中に秘密の引き出しを見つける。
その引き出しの中には第一次世界大戦中にある一人の兵士から妻に宛てた1914年付けの手紙が入っていた。
手紙には、クリスマスの戦場で起こった英、独両陣営の兵士たちの信じられないような出来事が書かれていた。
その出来事は公式の記録には残っていないが、語り継がれてきた実話なのだそうだ。

教師などの一般人が戦争に駆り出され、敵と争う。しかしその敵もまた争いを望まない一般人なのである。兵士たちは、お互いに無事に故郷に帰れるようにと祈る。

手紙を読み終えた‘わたし’はある行動をとる。
クリスマスに起こった素敵なエピソードをどうぞ。
関連記事




●外国人作家 トラックバック:0 コメント:6