もみじの本屋 2007年08月

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『ぼくは悪党になりたい』

ぼくは悪党になりたい『ぼくは悪党になりたい』 (角川文庫)
著:笹生陽子

生きたいように生きる人たちの中で、ぼくだけが貧乏くじをひいているのではないだろうか?(裏表紙より)

主人公は兎丸エイジ、17歳の高校生。弟の面倒をみながら家事全般をこなすしっかり者。
家庭に父親はいない。母親は自由奔放、バイヤーをしていてよく海外に行き長期間家を空ける。弟のヒロトは、実は異父の兄弟。ちっとも言うことを聞かない腕白坊主。

エイジの友人の羊谷や、羊谷の彼女のアヤ、ヒロトが病気になったとき助っ人としてやってきた杉尾さん。どの登場人物もしっかりとそのキャラクターがたっている。

いつものように母親が2か月間海外へとでかけた。今回もいつものように弟の面倒をみて、いつものように家事をして、いつものように母親の帰りを待つ日常を過ごすはずだった。
だけど、弟の病気から少しずつ、少しずついつもどおりの日常が崩れていった。

物語はテンポよく進んでいって、どんどん先を読まされる。
読んでいて感じたのが、エイジの不満のもとである母親の言動に対する解決や、エイジ以外の人物の心理が描かれていないことのすがすがしさである。そこが現実はこんなものだなと思えて、リアリティさえ感じた。
そして、その現実のなかでエイジがしっかりと成長していくあたりは、とてもうまいと思う。

エイジが映画「ギルバート・グレイプ」の主人公に感情移入しているが、この映画を見ているとよりこの本を楽しめるだろう。


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(関連商品)
ギルバート・グレイプDVD「ギルバート・グレイプ」 (角川エンタテインメント)
監督:ラッセ・ハルストレム 
主演:ジョニー・デップ、ジュリエット・ルイス、レオナルド・ディカプリオ
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コミュニティ( 本・雑誌 | ブックレビュー

『ヘビイチゴ・サナトリウム』

ヘビイチゴ・サナトリウム『ヘビイチゴ・サナトリウム』 (中公文庫)
著:ほしおさなえ

プロローグと「幽霊」「鍵のかかった部屋」「アルファベット・ビスケット」「遺書」の4章、そしてエピローグという構成であるが、4章の印象としては起承結転といった感じである。
結、転というのは、結でとりあえず事件はおさまりを見せて、そのあとに・・転がどのように転ぶかは読んで確認してもらいたい。

物語は中高一貫教育の女子校が舞台である。そこの屋上から江崎ハルナという生徒が転落死する。江崎ハルナは美術部に所属する高校3年生である。そして、美術部では以前にも同じ3年生の部長だった杉村梨花子が転落死している。どちらも自殺あるいは事故死の可能性が高いということである。この事件に関連はあるのか。

江崎ハルナの死後、学校でハルナの幽霊を見たという噂があちこちから出てくる。そして一人の国語教師宮坂がその幽霊に取りつかれたようになる。そして新たに一人の人物が転落死する。

美術部の中学3年生の西山海生と新木双葉は、その新たな転落死に違和感や疑問を感じ、事件について調べ始める。
他方、海生と双葉の担任で、国語教師の宮坂と同じ大学出身の数学教師高柳も二人とは違った視点から転落死に疑問をもつ。
これらの転落死ははたして事故なのかそれとも・・。

推理小説好きでたくさん読んでいる人などは、容易に先が読めてしまう部分も多少あるが、それでも推理小説としてはかなり質の高い作品であると思う。またミステリの要素だけでなくサスペンス的要素もある。というのもいくつかの視点から物語が進んでいくのだが、その中に犯人のものらしき視点も含まれているからである。

視点の移り変わりについていけないと話がこんがらがってしまうかもしれないが、丁寧に書いてあるのでよく読むとそう振り回されることもない。
ただ、美術部の生徒の描かれ方がやや印象に残りにくいようにも思うので、その点を注意して読むとより物語についていきやすいだろう。

あとがきで笠井潔が「自分と他人の境界のくずれ」をテーマにしているといったことを書いている。たしかにそういった部分は随所に見られるし、主軸的なテーマであると思う。
しかし、それ以上に印象的だったのは少女たちのやりとりである。海生と双葉の会話、海生とハルナの会話、ハルナとある少女の会話。何気ないものから意味ありげなものまで、そこには尊敬、喜び、悲しみ、嫉妬、憎しみ、嘆き、怒り、そして自分でもなんといっていいのか分からないような感情、さまざまなものが渦巻いている。この作品ではそのあたりの描写がうまいと思わされた。

誕生から完成まで約10年というこの作品は、読んでいて古さも感じさせられるが新しさも感じさせられるなんとも不思議な一冊である。


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(関連書籍)
鍵のかかった部屋『鍵のかかった部屋』
著:ポール・オースター (白水社)
作中でモチーフとして使われた本。


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