もみじの本屋 2007年10月

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『どこにもない動物園』

どこにもない動物園『どこにもない動物園』 立原えりかのファンタジーランド1
(青土社)
著:立原えりか

さまざまな動物が登場する16の話が収められている短編集。
全体に、哀愁というのだろうか、少し物悲しい雰囲気が漂っている。

とくに気になった作品は「花くいライオン」、「青い目をしたろば」、「オオカミの船」、「野原の食卓」、「光をたべる仔馬」、「木馬が乗った白い船」の6話。
いくつかを簡単に紹介しよう。

「花くいライオン」
ひげがなくなり、けもののくにの王さまかんむりをヒョウにあげて、ひとりけもののくにから離れていくライオン。それまで慕ってくれていたキリンもヒョウも見向きもしてくれない。
草原で涙をこぼして、「だれか、ともだちになってくださいよお。こころからの、ともだちなって、ヒゲがなくっても、ともだちでいてくださいよお」というと、ちいさな白い花が声をかけてくれたのだ。
ライオンとちいさな花はとっても仲良くなり、一緒にすごしていくのだけれど…。

「オオカミの船」のオオカミも、一人ぽっちで寂しくて友達をほしいと思っていて、ある一人の女の子と仲良くなる。一人の寂しさを思い、読んでいてこちらまでなんだかさみしくなってきた。だけど、とっても仲のいい友達ができて、そして結末は・・。どちらの結末も胸を締め付けられるような気がした。だけど、後味は悪くない。むしろ、冬の星空を見るようなそんな透きとおった清々しさを感じた。

「青い目をしたろば」
湖のほとりの小さな村、大きなアンズの木があるところで、子供をのせてアンズの花の下をひとめぐりするのがロバたちのしごとだった。そのなかに年をとった青い目をした一頭のロバがいた。そのロバは、好きになれる、愛してみることができる何かに会えないかと思っているのだった。
アンズの花が一番美しいある晴れた日、「わたしを、のせてくれる?」と、とてもちいさな女の子が青い目をしたロバにほっと笑いかける。そしてロバはその女の子を乗せて歩きはじめる。

ロバが好きになることの説明をこんなふうに言っていた。
「そのひとのために、せいいっぱい、何かしてあげるんだ。そのひとのことだけを、いっしょうけんめいにかんがえて、夢中になって……」
女の子のために、ロバは本当に一生懸命になるが…。
最後の「それは、たしかに、夏のにおいでした。」という一文が、悲しさや切なさよりも明るい何かを感じさせるところにひかれてしまう。

「木馬がのった白い船」
ある郵便局の局長さんが宿直にあたっていた時、一頭の木馬が手紙を出しにやってきた。木馬はとても遠い所に行くことになったので、おけしょうをしてほしい、見送りにきてほしいという内容の手紙だった。
木馬が返事をとりに来る日、局長さんはまた木馬に会えるのを嬉しく思いながら木馬を待ち、やってきた木馬に返事を読んでやる。
そして、局長さんも木馬の見送りにいくことにする。

この一話だけは、ほかの話とは少し違った印象をうけた。
ほかの話と同じように物悲しい雰囲気はあるものの、木馬の愛嬌のためだろうか、愉快な印象のほうが強かった。だから、ほかの話よりもシンプルに物語を楽しむことができた。


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コミュニティ( 本・雑誌 | ブックレビュー

『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』

配達あかずきん『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』 (東京創元社)
著:大崎梢

「……誰が、どうやって仕組んだのか、この謎だけは解いてみせて」
「わかりました。本屋の謎は本屋が解かなきゃ、ですね。任せてください」(「配達あかずきん」より)


駅ビルの6階にある書店、成風堂。この書店で働いている杏子と多絵が、お客さんのもちこんでくる、あるいは書店で起こるさまざまな謎を解いていく。

「パンダは囁く」―― 老人が近所に住む男性に買ってきてほしいとリクエストした本はわけのわからない暗号のような言葉だった。
「標野にて 君が袖振る」――コミック‘あさきゆめみし’を購入後、電話で娘に20年前の息子のひき逃げ事件について気がついたことがあると話し、失踪した女性の行方は。
「配達あかずきん」――美容院‘ノエル’に配達した雑誌に挟まれていた盗撮写真。いったい誰が写真を挟んだのか。
「六冊目のメッセージ」――入院中の女性にその母親から頼まれて本を選んであげた書店員。しかし後日確認すると該当する書店員はいなかった。
「ディスプレイ・リプレイ」――成風堂のバイト、夕紀とその友人たちがディスプレイしたコミックコーナーが荒らされた。誰が何のために‥。

もちろんストーリーもよいのだけど、それ以前に本屋が舞台であるということだけでも読んでいて楽しい。それもかなり丁寧に本屋の内側が描かれている。

はじめに杏子が、なんとも頼りないヒントだけで、お客さんの探している本を言い当てる。その様はまさに探偵のようだった。しかし、このようなことは本屋では日常に起きているのだ。それは最後に掲載されている書店人の対談からもうかがえる。

またそこかしこにいろいろな本の名前がでてきて、本好きの心をくすぐる。
ミステリ好きにもおすすめしたいが、それだけでなく本好きの人ならきっと楽しめると思える一冊である。


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(関連書籍)
晩夏に捧ぐ『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』
著:大崎梢 (東京創元社)

サイン会はいかが?『サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ』
著:大崎梢 (東京創元社)
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コミュニティ( 本・雑誌 | 推理小説・ミステリー

『秘密。 私と私のあいだの十二話』

秘密。『秘密。 私と私のあいだの十二話』 (メディアファクトリー)
編:ダ・ヴィンチ編集部
著:著:森絵都、小川洋子、北村薫、伊坂幸太郎(他)

レコードのA面・B面のように、ひとつのストーリーを2人の別主人公の視点で綴った短編12編。
(中略)
出来事や出会いが立場の違い、状況の違いでどう受けとめられるのか、言葉と言葉の裏にあるものが描かれた不思議な一冊。(裏表紙より)

A、B合わせて7,8ページ、一方だけだと3,4ページと、一般的な短編よりもずっと短く、気軽に読むことができる。そしてこの短いページ数の中でもしっかりと12人の作家の色が見られる。

それぞれの作品についてじっくり書きたいところだが、短いだけにすぐにネタばれしてしまいそうなので、気に入ったものの中のいくつかについて一言だけ書かせてもらうことにする。

森絵都の作品はバーで会う男女のやりとりとその背景にシンプルにうまいと思わせられた。
亡くなった伯母に対する甥の心情が伝わってくようだった小川洋子の作品には、彼女らしい静けさ穏やかさ漂っていた。
堀江敏幸の作品は、黒電話という物そのものに懐かしさを感じながらも、さらにその文章に郷愁を誘われじわりじわりと染入ってくるものがあった。

それぞれの話の前にはモノクロームの写真が一枚ついており、それがまた静かにその一編を物語っていていい。お気に入りは「別荘地の犬」で使われている水入れ?と滑り台の犬の2枚と「怪奇毒吐き女」で使われている右端に制服がすこし見えている1枚。なんだかすごく引きつけられてしまった。

また作家のサインが載っているのもおもしろい。この人はこういうサインをするのかとか、こんな字をかくのか、なんて思いながら眺めていると、なんだか著者がすこしだけ身近に感じられてくる。


(収録作品)
「ご不在票―OUT-SIDE―」/「ご不在票―IN-SIDE―」 吉田修一
「彼女の彼の特別な日」/「彼の彼女の特別な日」 森絵都
「ニラタマA」/「ニラタマB」 佐藤正午
「震度四の秘密――男」/「震度四の秘密――女」 有栖川有栖
「電話アーティストの甥」/「電話アーティストの恋人」 小川洋子
「別荘地の犬 A-side」/「別荘地の犬 B-side」 篠田節子
「< ユキ >」/「< ヒロコ >」 唯川恵
「黒電話――A」/「黒電話――B」 堀江敏幸
「百合子姫」/「怪奇毒吐き女」 北村薫
「ライフ システムエンジニア編」/「ライフ ミッドフィルダー編」 伊坂幸太郎
「お江戸に咲いた灼熱の花」/「ダーリンは演技派」 三浦しをん
「監視者/私」/「被監視者/僕」 阿部和重


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(関連書籍)
君へ。『君へ。 つたえたい気持ち三十七話』
編:ダ・ヴィンチ編集部 (メディアファクトリー)
著:北方謙三、田口ランディ、石田衣良、川上弘美(他)

ありがと。『ありがと。 あのころの宝もの十二話』
編:ダ・ヴィンチ編集部 (メディアファクトリー)
狗飼恭子、加納朋子、三浦しをん(他)
→ レビュー


嘘つき。『嘘つき。 やさしい嘘十話』
編:ダ・ヴィンチ編集部 (メディアファクトリー)
著:西加奈子、豊島ミホ、井上荒野(他)
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『沼地のある森を抜けて』

沼地のある森を抜けて『沼地のある森を抜けて』 (新潮社)
著:梨木香歩

主人公は、洗剤や化粧品などを扱う化学メーカーの研究所で働く会社員の上淵久美。
久美の両親の死後、時子が面倒を見ていた先祖から受け継がれてきた「ぬか床」を、時子が亡くなったことによって今度は久美が面倒を見ることになる。
しかし、そのぬか床には奇妙な秘密があったのだ。

物語には、時子とは別のもう一人の叔母加世子久美、久美の幼馴染で執着がなく依存体質なフリオ。男性性を否定し、女性性であるニューハーフなどを選ぶでもなく、中性性を選んだ風野さんなどが登場する。

基本的には、ぬか床のこと、そして祖先のことを久美が調べていくという話がベースである。そのなかで時子の日記や安世文書なども、読者がそのまま読める形で登場する。
また、それとは別に「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」として、不思議なシマの話が登場する。この話は、ある意味では本筋と深く関連しているのであるが、本筋とは切り離された話である

話の伏線がそこかしこにちりばめられてあり、また酵母や菌類の話、人間の話、登場人物たちにとっての私的な話、シマの話などが複雑に絡み合い、ちょっとした話の中に、二重、三重の含みがあることがわかる。

生殖(無性・有性)による命の連鎖と、その永遠にも近い連鎖に息づく想い。読んでいるとそんなことに思いを馳せてしまうのではないだろうか。


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『ミミズクとオリーブ』

ミミズクとオリーブ『ミミズクとオリーブ』 (創元推理文庫)
著:芦原すなお

八王子近郊に住む作家の‘ぼく’とその奥さん。この奥さんが、時折やってくる‘ぼく’の友人に絶品の讃岐の郷土料理を振舞いながら、持ち込まれる謎も軽やかに解決する。その見事な安楽椅子探偵ぶりは知恵の女神さながら。
作家の‘ぼく’も、奥さんに頼まれいくつかの確認事項を調べるのだが、その無駄に細かな仕事、本人も気づかないうちに事件の核心をつく調査はかなりの名助手ぶりである。

話の中ではいろいろな夫婦、いろいろな男女が登場する。そして、男女間の意識の違いがそこかしこに描かれていて、なんだか考えさせられてしまう。最後には可愛らしい夫婦(?)も登場する。

この本の魅力のひとつは、やはり奥さんの料理である。その個所を読んでいるだけでよだれがでてきそうである。解説を書いている加納朋子も一品作ってみたそうだ。
この本を読んで、食べてみたい料理にチャレンジしてみるのもまたおもしろいかもしれない。


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(関連書籍)
嫁洗い池『嫁洗い池』
著:芦原すなお (創元推理文庫)

わが身世にふる、じじわかし『わが身世にふる、じじわかし』
著:芦原すなお (創元推理文庫)
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