もみじの本屋 2009年09月

『ぼくらのサイテーの夏』

ぼくらのサイテーの夏『ぼくらのサイテーの夏』 - 児童書 -
著:笹生陽子 (講談社文庫)

粘りつくような暑さが続く夏、小学6年の1学期の終業式の日、学校で「階段落ち」をして遊んでいた。
主人公であるぼく(=桃井)は四組で、相手は二組の奴らだった。二組の栗田に九段落ちをかっこよくキメられて勝負に負けた。さらに桃井はケガまでしてしまった。それだけならまだしも、罰として夏休み中プールの掃除をする羽目になってしまう。しかも成り行きから栗田と二人で。

友達との関係やそれぞれの家庭の問題などを織り込みながら、「ぼく」の成長が丁寧に描かれている。
デビュー作ということでしかたがないのかもしれないが、桃井家が好転していく様子や栗田家で起こることなどは多少ディテールの甘さを感じてしまった。しかし、そんなことが気にならないくらい勢いのある展開で、また児童文学はこうでなくてはと思わされるほどのさわやかな読後感をもっている。

作中にでてくる桃井の父と栗田の父の時間に関する考え方も物語のエッセンスとしてうまく効いている。



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『紫の砂漠』

紫の砂漠『紫の砂漠』 (ハルキ文庫)
著:松村栄子

見守る神(ナチュレ)、告ぐる神(サイコ)、聞く神(メモリ)、それぞれに使える祈禱師、巫祝、書記。
人間は生まれたときには性別がなく、真実の恋をして生涯の伴侶を定めたとき初めて生む性と守る性に分化、つまり男女の性差が決定する。

地理的には中央に紫の砂漠(デゼール・ヴィオレ)があり、その周りに村がある。基本的には紫の砂漠は神の領域として禁域であり立ち入ることは許されない。
子どもは7歳になると運命の旅をして一斉に聞く神の元に集められ、告げる神によって運命の親の元に授けられる。

こういった設定にはじめは戸惑うかもしれないが、読み進めていくとしっかりと理解できるように書かれている。

主人公のシェプシは塩の村に生まれ育ち、紫の砂漠に強く心惹かれている。
また普通の人とは違い、丸い耳を持っている。
シェプシは落日近い紫の砂漠で隊商からはぐれて一人彷徨う吟遊詩人を見つける。
そしてシェプシはその詩人と関係を深めつつ、運命の旅へと出発するのであった。

読んでいて、異国の風に吹かれているような奇妙な感覚に襲われた。
まったく知らない世界、自分の住んでいるところは全く異なる文化、それなのにどこか懐かしい、そんな風に感じたのだ。

運命の旅の途中、シェプシは多くのこと知りを経験する。
その内容はここでは書かないが、その内容に多くのことを考え、またそれがもたらす結末になんだかやりきれない思いをした。そして読み終えたときにはとても静かな心持ちになった。

SFやファンタジー、あるいはロマンティックな物語が好きならば一度手にとってみてはと思う一冊であった。



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(関連書籍)
詩人の夢『詩人の夢』
著:松村栄子 (ハルキ文庫)

紫の砂漠の続編
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