もみじの本屋 2017年06月

『チョコリエッタ』

チョコリエッタ
『チョコリエッタ』 (角川文庫)
著:大島真寿美


私はチョコリエッタ。
うそ。
宮永知世子なんていうダサイ名前。
春休み、髪を切った。人が啞然とするくらい短く切った。どこからどう見ても少年になった。女の子なんてまっぴらだから。
うそ。
少年だってまっぴら。
ついでに言えば人間なんてまっぴら。  (冒頭より)


知世子が幼稚園の夏休みに、家族で出かけたとき交通事故で母を亡くした。
知世子は、父と、母親代わりをしてくれている父の妹の霧湖ちゃんと、そして事故の数か月前に飼いだした犬のジュリエッタと暮らしていた。

でも、その愛犬ジュリエッタも知世子が高校一年生の2月に死んだ。

この4月からは高校二年生となる知世子。
新年度早々、進路調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらった。


愛犬のジュリエッタの名前の由来は、犬がやってきた日、母が目がくりくりしていて、ジュリエッタに似ているということでつけた。
ジュリエッタはフェリーニのジュリエッタだという。

イタリアの映画監督、フェデリコ・フェリーニ。
そのフェリーニのパートナー、女優であり妻でもあるジュリエッタ・マシーナ。

本作ではフェリーニのとくに「道」に関連した内容が随所に登場する。


映画研究会に所属する知世子は、OBの正岡正宗に半ば強引にカメラを向けられる。


読んでみて感じたのは、静かな曲をピアノの独奏で聴いているかの様な、美しさと寂しさ。
熱のこもった青春小説ではなく、若いが故の危うさ、不安定さ、繊細さを透明感ある文章で見事に書きだしている。





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『気障でけっこうです』

気障でけっこうです
『気障でけっこうです』 (角川文庫)
著:小嶋陽太郎


女子高生のきよ子が公園で出くわしたのは、地面に首まですっぽり埋まったおじさんだった。
「人生の小路に潜む、落とし穴にはまり…」と間抜けな格好で嘆く男。
きよ子は助け出そうとするも、途中で車にはねられ病院へ。
その後、目を覚ましたきよ子の前に、なんとあの男が現れた。

「私、死んじゃったんですよ」

そう、幽霊となって ―― 七三分けの気弱な幽霊と今どき女子高生の奇妙な交流を描く、切なく不思議な新感覚の青春小説。
(裏表紙より)


小嶋陽太郎のデビュー作で、第十六回ボイルドエッグズ新人賞受賞作である。

女子高生がいきなり、公園の地面に埋まっているおじさんと出会うという、わけのわからないシチュエーションから始まる。
そして、女子高生は車にはねられ、おじさんはそのまま死んだ。いきなりのバッドエンド。
物語の始まりから衝撃的である。

そして幽霊としてでてくるおじさん。
おじさんが語る死んだ後の世界のシステムはおもしろい。

また女子高生の描写、とくに口の悪さが巧いと思わされた。

デビュー作ということで、ディテールの甘い部分も多々あるが、それを補ってあまりある勢いを感じた。

4作目の『こちら文学少女になります』は既読であり、そちらにも「文に勢いがあると感じた」と書いていたが、この「文の勢い」はデビュー当時からの著者の持ち味ということなのだろう。

今後も楽しみな作家である。





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