もみじの本屋 『沼地のある森を抜けて』

『沼地のある森を抜けて』

沼地のある森を抜けて『沼地のある森を抜けて』 (新潮社)
著:梨木香歩

主人公は、洗剤や化粧品などを扱う化学メーカーの研究所で働く会社員の上淵久美。
久美の両親の死後、時子が面倒を見ていた先祖から受け継がれてきた「ぬか床」を、時子が亡くなったことによって今度は久美が面倒を見ることになる。
しかし、そのぬか床には奇妙な秘密があったのだ。

物語には、時子とは別のもう一人の叔母加世子久美、久美の幼馴染で執着がなく依存体質なフリオ。男性性を否定し、女性性であるニューハーフなどを選ぶでもなく、中性性を選んだ風野さんなどが登場する。

基本的には、ぬか床のこと、そして祖先のことを久美が調べていくという話がベースである。そのなかで時子の日記や安世文書なども、読者がそのまま読める形で登場する。
また、それとは別に「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」として、不思議なシマの話が登場する。この話は、ある意味では本筋と深く関連しているのであるが、本筋とは切り離された話である

話の伏線がそこかしこにちりばめられてあり、また酵母や菌類の話、人間の話、登場人物たちにとっての私的な話、シマの話などが複雑に絡み合い、ちょっとした話の中に、二重、三重の含みがあることがわかる。

生殖(無性・有性)による命の連鎖と、その永遠にも近い連鎖に息づく想い。読んでいるとそんなことに思いを馳せてしまうのではないだろうか。


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