もみじの本屋 『こうちゃん』

『こうちゃん』

こうちゃん『こうちゃん』 - 絵本 -
文:須賀敦子 絵:酒井駒子 (川出書房新社)
あなたは こうちゃんに あったことが ありますか。
こうちゃんって どこの子かって。そんなこと だれひとりとして しりません。 (本文より)


どこからきたのか、どこへいくのか、そんなことは誰にもわからない、こうちゃん自身にもわからない、それがこうちゃん。
でも読んでいると、こうちゃんの存在をたしかに感じるのだ。そしてそして不思議な懐かしかささえ感じる。

本のなかの‘わたし’と本を読んでいる‘わたし’とそしてこうちゃん、この三者は平行に引かれた3本の線のように、一定の間隔を保っている。

ふつうは物語の登場人物に感情移入すればするほど、その物語が愛おしく、自分に寄り添ってくる。しかし、この本ではその一定の間隔が、逆に物語を愛おしくさせ、‘わたし’を愛おしくさせ、こうちゃんの存在を愛おしくさせる。そして、ことばのひとつひとつがとても心地よく胸に染入ってくる。

酒井駒子の絵は、須賀敦子の異国情緒を感じさせるだけど日本らしさのある文章に素晴らしくマッチしている。特に赤色の使い方がうまいなあと思わされた。


読み終わったとき、胸を締め付けられるような思いに駆られた。それはまるで大切な人との別れのように、切なくて、かなしくて、やるせいないような感覚だった。
どうしてだろう。
これまでに自分が失ってきたものに対する思いなのだろうか。

(いいなと思った記事)
●  こうちゃん (まっしろな気持ち)
 …… 素敵な思い出と妄想にうっとりさせられる。



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以下は備忘録として、特に印象的だったところを簡単に記しておく。
読んだときの印象を損ねてしまうかもしれないので、本に興味をもって、これから読むという人は気を付けて。

14「ぼろを着た ちいさな男の子が」という件からからまる箇所と最後のページの子羊のぬいぐるみを抱えている子の絵が、自分のなかで関連付けられてしまったこと。

19「――水はいつも よろこび うたっている。」というページと、鳥の絵、絵の中のイタリア語とその響き。アッシジを見上げる平野を思い浮かべて。

23「芝草の丘が 三月もおわりにちかづくと」ではじまるページ。花むらと麦わら帽子と色とりどりのリボンのイメージ。
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  須賀敦子 トラックバック:1 コメント:2
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コメント

>ましろさん
コメントありがとうございます!
何度も手に取ってみたくなる一冊ですよね。
読むたびにこうちゃんを近くに感じることができます。
そして酒井駒子さんの絵に見とれてしまいます。

2007 11/25 大葉 もみじ 編集


もみじさん、こんにちは。
語り手のわたし、読み手であるわたし、そしてこうちゃん。
その三者に注目されていたのが、とても興味深かったです。
本当に絶妙なバランスの三者関係ですよね。
またこの本を手にとってみたくなりました。

2007 11/22 ましろ 編集


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