もみじの本屋 『[新世界] 透明標本』

『[新世界] 透明標本』

透明標本『[新世界] 透明標本』
著:冨田伊織 (小学館)

透明標本は「『筋肉を透明化し、軟骨を青く、硬骨を赤く染色する』という、骨格研究の手法 (本文より)」なのだそうだ。

書店で見かけ、この本を手に取ったとき表紙の鳥の骨格をイラストか何かだと思った。しかし、説明を読んでみると実際の鳥を標本にしたものであった。
そして中を見てみてその美しさに息をのんだ。透明感のある色、骨格の緻密さと、標本になってなお感じられる動物の動き。

おなじ脊椎動物なのだから当たり前なのだが、魚類も両生類も爬虫類も鳥類も哺乳類も似たような骨の構造をしていることに、改めて驚かされる。もちろん、骨学的には(鳥類と哺乳類で指骨(趾骨)の数が違ったり)多々違いはあるだろうが、例えばカエルとトリとネズミの外見は全く違うのに頭蓋骨があり、椎骨があり、上腕骨や前腕骨がありといったように基本的な構造はやはりそっくりである。

この本は生々しいはずの生物をとても無機的に見せてくれ、色や構図などもとても芸術的である。
しかし、もちろん標本として登場する動物たちにも以前は生があり、他の生命を食べて生きていたという事実はある。それを感じさせてくれるのがヤマカガシがカエルを丸飲みにしている標本の写真である。

綺麗なだけの写真集に終わらず、生が確かにそこにあったことを感じさせ、考えさせてもくれる一冊である。
ただ、動きを出すためにわざとなのであろうが骨格をぼかしてあるところも多く、細かな骨格の勉強にはあまり使えないかもしれない。しかし、ある程度知識があれば、逆に鳥の癒合鎖骨がきれいに見えるなとか、そういった視点からも楽しめるのではないだろうか。

いろいろな意味で興味深い一冊である。

関連記事




●タ行の作家 トラックバック:0 コメント:0
コミュニティ( 本・雑誌 | 本の紹介

コメントの投稿






管理者にだけ公開する

トラックバック

記事のURL
http://momijibook.blog5.fc2.com/blog-entry-370.html

トラックバックURL
http://momijibook.blog5.fc2.com/tb.php/370-df8045a0