もみじの本屋 『僕は、そして僕たちはどう生きるか』

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『僕は、そして僕たちはどう生きるか』

僕は、そして僕たちはどう生きるか『僕は、そして僕たちはどう生きるか』 (理論社)
著:梨木香歩

この本は主人公であるコペル君(14歳)が書いたものという体をなしている。
内容は連休初日の一日の出来事である。

兵役、兵役拒否、ボーイスカウト、自然保護と開発などの話がでてきて、最終的には一人と群れ(個と集団)というテーマについて描かれている。

梨木香歩の作品としては、一つ一つの事象に対する詰め方が甘いと感じたが、14歳の少年が書いたことということで、敢えて問題を単純化して問題提起することにより読み手に考えてもらおうという意図があるのではと思うのは考えすぎだろうか。

出てくる登場人物も癖のある人物ばかりで、共感できる人もできない人もいるだろう。それでも、それが最終的な群れを形成し、その群れに飛び込むも飛び込まないも読者に委ねてくれている。

短い作品なのでサクッと読めるし、また読むことでいろいろと考えさせられる作品となっている。



以下は個人的備忘録として。

※ページ数は単行本より
……ああ、そうか、僕が「どっきりカメラ」みたいなのにもつ嫌な感じは、それなのかもしれない。実験している感じ。対等な場所からでなく、相手より安全な場所から、その相手を観察している感じ。やってる本人に明確な悪意はないんだろうけれど、その「無邪気さ」を隠れ蓑にして、人を笑いものにする。そう、こいつのことみんなで笑おうよ、みたいな妙ななれなれしさと媚び。人一人犠牲にして簡単に仲間意識を捏造しようとするお手軽さと無理矢理さ。笑いの質の不健全さ。演出する方にも見せられてつい笑う方にも、後ろめたさみたいなものが必ずあると思う。後味の悪い笑い。
(pp.38-39)


「そのうちだんだん、僕も、こういうこと、つまり、軍隊風の訓練っていうのは、もしかしたらそれほど悪いことじゃなくて、いいこともあるんじゃないかと思えてきたんだ。」
「……へえ。たとえば」
僕は少し、身構えた。
「自分の欲求より社会の利益を優先する、なんていう、騎士道的、武士道的な考え方が中核にあるところなんか。でもすぐ、何かやっぱり違う、って思った。その辺がすごく複雑で、なんていうか、今もまだはっきり言えないところがあるんだけれど」
「社会のためにっていうの、分かりやすいよな、確かに」
僕は慎重に応えた。
「うん、分かりやすい正義なんだ」
ユージンも頷いた。僕は、
「でも、軍隊って、それだけじゃない」
と、ゆっくりと、はっきり言った。ユージンは、そんなこと、分かってるさ、と言わんばかりに軽く頷いて、
「ボーイスカウトっていうのは、その辺の、軍隊と重なる部分の、でも戦闘目的でなく使えるハウツーを取り出したものだっていう気がしてきたんだ」
「核を平和利用しよう、っていうみたいな?」
「まあ、近いかな」
ボーイスカウトって、子供にアウトドア生活のあれこれを教える集団、みたいな認識しかなかったから、それが軍隊に関連付けられることがあろうとは、思いもしなかった。
「軍隊の、平和利用、かあ。それだけ聞いてたら、自衛隊みたいだな」
「でもさ、問題はもっと複雑だってことが分かってきた。そうしたら、何かだんだん、よく分からなくなってきた」
(pp.159-161)


そうか。
人生って、そういうことなのか。
いくらいろいろ計画してたって待ったなしなんだ。いつまでもあるもんじゃないんだ。僕はそんな当たり前のことが、なんかこのときものすごくリアルに感じられた。
「米谷さんと山を歩いたとき、僕は思い切って、『あの洞穴で<どう生きるか>って考えてたって聞いたんですけど』、って話しかけた。そしたら、米谷さんは、『戦時中だったからね。自分の生き方を考える、ということは、戦争のことを考えるってことと切り離せなかったんだね。でも人間って弱いものだから、集団の中にいるとつい、皆と同じ行動を取ったり、同じように考えがちになる。あそこで、たった一人きりになって、初めて純粋に、僕はどう考えるのか、これからどう生きるのか、って考えられるようになった。そしたら、次に、じゃあ、僕たちは、って考えられたんだ』って答えた」
(p.187)
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