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『チョコリエッタ』

チョコリエッタ
『チョコリエッタ』 (角川文庫)
著:大島真寿美


私はチョコリエッタ。
うそ。
宮永知世子なんていうダサイ名前。
春休み、髪を切った。人が啞然とするくらい短く切った。どこからどう見ても少年になった。女の子なんてまっぴらだから。
うそ。
少年だってまっぴら。
ついでに言えば人間なんてまっぴら。  (冒頭より)


知世子が幼稚園の夏休みに、家族で出かけたとき交通事故で母を亡くした。
知世子は、父と、母親代わりをしてくれている父の妹の霧湖ちゃんと、そして事故の数か月前に飼いだした犬のジュリエッタと暮らしていた。

でも、その愛犬ジュリエッタも知世子が高校一年生の2月に死んだ。

この4月からは高校二年生となる知世子。
新年度早々、進路調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらった。


愛犬のジュリエッタの名前の由来は、犬がやってきた日、母が目がくりくりしていて、ジュリエッタに似ているということでつけた。
ジュリエッタはフェリーニのジュリエッタだという。

イタリアの映画監督、フェデリコ・フェリーニ。
そのフェリーニのパートナー、女優であり妻でもあるジュリエッタ・マシーナ。

本作ではフェリーニのとくに「道」に関連した内容が随所に登場する。


映画研究会に所属する知世子は、OBの正岡正宗に半ば強引にカメラを向けられる。


読んでみて感じたのは、静かな曲をピアノの独奏で聴いているかの様な、美しさと寂しさ。
熱のこもった青春小説ではなく、若いが故の危うさ、不安定さ、繊細さを透明感ある文章で見事に書きだしている。





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『気障でけっこうです』

気障でけっこうです
『気障でけっこうです』 (角川文庫)
著:小嶋陽太郎


女子高生のきよ子が公園で出くわしたのは、地面に首まですっぽり埋まったおじさんだった。
「人生の小路に潜む、落とし穴にはまり…」と間抜けな格好で嘆く男。
きよ子は助け出そうとするも、途中で車にはねられ病院へ。
その後、目を覚ましたきよ子の前に、なんとあの男が現れた。

「私、死んじゃったんですよ」

そう、幽霊となって ―― 七三分けの気弱な幽霊と今どき女子高生の奇妙な交流を描く、切なく不思議な新感覚の青春小説。
(裏表紙より)


小嶋陽太郎のデビュー作で、第十六回ボイルドエッグズ新人賞受賞作である。

女子高生がいきなり、公園の地面に埋まっているおじさんと出会うという、わけのわからないシチュエーションから始まる。
そして、女子高生は車にはねられ、おじさんはそのまま死んだ。いきなりのバッドエンド。
物語の始まりから衝撃的である。

そして幽霊としてでてくるおじさん。
おじさんが語る死んだ後の世界のシステムはおもしろい。

また女子高生の描写、とくに口の悪さが巧いと思わされた。

デビュー作ということで、ディテールの甘い部分も多々あるが、それを補ってあまりある勢いを感じた。

4作目の『こちら文学少女になります』は既読であり、そちらにも「文に勢いがあると感じた」と書いていたが、この「文の勢い」はデビュー当時からの著者の持ち味ということなのだろう。

今後も楽しみな作家である。





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『我ら荒野の七重奏(セプテット)』

我ら荒野の七重奏
『我ら荒野の七重奏』 (集英社)
著:加納朋子


『七人の敵がいる』の続編である。

冒頭では陽子の息子、陽介も小学校の高学年になっている。
そして、紆余曲折がありつつも中学生になり、吹奏楽部へと入部する。

主人公の陽子は働きながら子育てもこなす兼業主婦(ワーキングママ)である。
彼女の男勝りで思ったことは物怖じせず言ってしまう性格から、ついつい周りに敵をつくってしまう。
そんな彼女は、前作では息子の陽介の小学校入学によって、PTAや学童などの活動に奮闘をみせた。

小学校のPTAで苦労させられた陽子だが、中学でもクジでPTA役員をすることに。
だがこの本の中核はPTAではなく、吹奏楽部の保護者会である。

小学校のPTAでの苦労から「動かざること山田のごとし」で、事を荒立てずに行こうとする陽子。
しかし、相変わらずの男勝りで思ったことは物怖じせず言ってしまう性格は、やはりいろいろとやらかしてしまうのである。

そこに前作でも登場した玉野遥や五十嵐礼子、村辺千香も加わり、てんやわんやである。


中学で(力を入れている)部活をしている子を持つ親はこんなにも大変なのかと思いながら、楽しく読み進めることができた。



久しぶりに加納朋子の作品を読んで、一週間の「7」、虹の七色の「7」、「七人の敵がいる」の「7」、そして七重奏の「7」と7でつながる物語をまた1から読み返したくなってきた。
『月曜日の水玉模様』は陽子の高校時代のソフトボール部キャプテンだった片桐陶子が主人公であり(陽子は登場しない)、『レイン・レインボウ』はそのソフトボール部のメンバーたちの群像劇である(陽子の初出となる作品)。





(関連書籍)
tukinosabakuwosabasabato『レインレイン・ボウ』
著:加納朋子 (集英社文庫)

→ レビュー



tukinosabakuwosabasabato『七人の敵がいる』
著:加納朋子 (集英社文庫)

→ レビュー






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『こちら文学少女になります』

こちら文学少女になります
『こちら文学少女になります』 (文藝春秋)
著:小嶋陽太郎

「文学部で、専攻は日本文学。本を読むことを唯一にして最大の娯楽として生きてきた」文学少女の山田友梨。
就職先の出版社、遊泳社で文芸部を希望していたが、配属先は青年漫画誌・ヤングビートの編集部だった。

クセ者ぞろいの編集部で、はじめて担当することになった大物作家をいきなり激怒させる。
さらに雑誌で1,2を争う人気の「いまだ、できず」や「キヨのひらく箱」の担当も任されて、兎にも角にも戸惑いばかりの日々。

そんな中、家にはなぜか「キヨのひらく箱」のキヨまで現れ……。



主人公が漫画編集者として四苦八苦しながら、過ぎていく日々は展開が早く、さくさくと読み進めることができる。
内容もおもしろく、文に勢いがあると感じた。

謎も用意されているが、こちらは勘のいい人ならすぐにわかってしまうだろう。

ある意味ではシンプルな、ひとりの新人社員の成長を描く物語。

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『カード・ウォッチャー』

カード・ウォッチャー
『カード・ウォッチャー』 (角川春樹事務所)
著:石持浅海

塚原ゴムの基礎研究室で働く下村勇介。
彼がサービス残業中に怪我をしたことを発端に労働基準監督官の臨検が入ることとなる。

臨検ときき大慌ての研究総務の米田と小野。
臨検のための準備をしている最中、小野は倒れている基礎研究所員の八尾を発見。
すぐさま米田に知らせるが八尾はすでに息を引き取っていた。

もうすぐ労働基準監督官がやってくるというタイミングで遺体を発見した研究総務の二人がとった行動は。


読み終わって、なんだかやるせない話だなと思った。
もちろん謎は解決されすっきりするのだが。

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